春屋

こちらはゲーム「THE IDOLM@STER」「東方project」を応援しているサイトです。管理人のプレイ日記や、SSが置いてあります。
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アイマスSS やよいSP編 第一話「すぐちかくにあるピンチ?」

注意:微妙に本編とちがうかもしれませんが、
    それでもOKならどうぞ?。
一応、カテゴリにある「アイマスのSS やよい編」を
    見てくるとより面白くなるかも。





それは8月のくそ暑い日の事だった。

765プロのプロデューサーである俺、『黒崎 絆』はとある雑居ビルで荷物を
整理していた。

「あ~~~っつい!くそ、この部屋クーラー効かねぇ・・・」

俺がそんな愚痴をこぼしていると、後ろからポスターか何かで頭を
つつかれた。

「コラ、文句を言ってないで早く片付ける」

俺の頭を突いてたのは765プロの所属アイドルである律子。
元は事務員のアルバイトでこの事務所に入っただけあってテキパキと
動いている。

「さすが事務員アイドルだな……あ、いや、冗談だからポスターを持ったまま
元新撰組の斉藤さんみたいな構えはやめてくれ、マジで」

俺が律子に頭を貫かれようとしてると、本当の事務員の小鳥と
765プロのもう一人のプロデューサーの綾乃が隣の部屋の掃除を
終えて戻ってきた。

「あら、相変わらず仲良くしてますね♪」

「小鳥・・・どうやったらこの状況がそう見えるんだよ」

「それはいいとして。結構片付いたわね」

「そうだな。でも・・・まさかココに戻ってくる事になるとは思わなかったぞ」

今、俺たちが居るこの雑居ビル。ここは一番最初に765プロがあった場所だ。
事務所が大きくなった事もあってスペースの大きな場所へ事務所へ移した
のだが……

「おお、みんなご苦労様。冷たい物を買ってきたから休憩したらどうだい?」

「おっ、ここに戻ってくる事になった原因が来たぞ」

「ぐ、ぐふっ!」

俺が意地悪く言ってやると、社長は壁によりかかってしまった。

「う、うう・・・すまない。私のせいでこんな事に・・・」

「そうですよねー。素人がいきなり株に手を出すからこうなるんですよー」

「そうそう、せめて律子さんに相談するべきでしたね」

「まったくだ」

「ほ、本当にすまない……」

俺たちがなんで小さな事務所に逆戻りしたかと言うと・・・

なんでも、社長が長年付き合っている友人から株を買わないかと
進められたらしい。後で分かったのだが、その株の会社は某有名ゲーム機を
作ってる様な会社で、普通に考えたら損しないはず・・・だったのだが。
ニュースを見ていれば分かる様に、リーマンショックだとか色々で株が暴落。
で、結果を言えば大損したのである。幸い、会社が潰れるほどの
大損になる前に律子が何とかしたのだが(何とかできた律子は尊敬する)、
色々と節約するために前のでかい事務所を手放す事になったのだ。

「はいはい、もうその辺で許してあげなさいって。社長だって、それで
儲かったらみんなの為になるってやった事だし。ねっ、社長」

「あ、綾乃くん・・・ありがとう・・・」

「まったく、綾乃は甘いな~。まあ、今回の事がネタになって逆に仕事が
増えたのはラッキーだったが」

当然、こんな事があればイメージが下がる・・・はずだったのだが、
やよいやら春香がTV番組でその話を面白く話してしまった所、
それが視聴者にウケてしまった。それだけじゃなく、同情されたのか
応援のメールとかが殺到した。おかげで仕事には困らないが・・・
世の中、どうなってるのかね。

「そういや、他のやつらはどこ行った?」

「そろそろ戻ってくると思いますけど・・・」

と、小鳥が言っているとドアの方から声が聞こえてきた。

「ただいま戻りまし・・・ったあ~~!!」

ガッシャーン!と盛大な音を立てて春香が転んでいた。
いつも通りの風景だな。

「春香・・・せっかくプロデューサー達が片付けたのに散らかしたらダメよ」

「千早ちゃん、心配してあげようよ・・・。大丈夫、春香ちゃん?」

千早と雪歩も戻ってきたみたいだな。

「千早、そっちは終わったみたいだな」

「はい。下にある居酒屋さんに感謝ですね」

「そうだよね、765プロがあった場所だからって綺麗に取って置いてくれた
 みたいだし」

「そうだな、後でお礼言っておくか。お前達も休めよ、ジュースあるぞ」

俺はそう言い春香たちにジュースを渡してやった。そうしていると、別の所を
掃除していたあずさや美希たちが戻ってきた。

「あー!兄ちゃんたちだけずるいー!」

「そうだそうだー!」

「あ~、もう、うるさいな。心配すんなって、お前達の分もあるよ」

『わーい!』

「ボクもいただきますね、プロデューサー」

「はいよ。ほら、あずさと美希も」

「あら、ありがとうございます」

「ありがとうなの♪ハニー♪」

「・・・おい、引っ付いてくるな。ただでさえ暑いんだから」

それにお前はその髪の毛のせいでより一層暑い。本人は暑くないのか?

「あれ?そういえば、やよいちゃんと伊織ちゃんが見えないんだけど?」

「そういえば・・・どこ行ったんだ?」

綾乃も俺も部屋を見回してみたが二人の姿は見えなかった。

「んう?やよいとデコちゃんなら外にいたよ」

「外に?・・・ってまさか」

美希が引っ付いたままの俺は事務所の窓を開けて下を見ると、
やよいと伊織が・・・いや、やよいが楽しそうにホウキで掃除をしていた。


「ふんふんふ~ん♪」

「あんた・・・よくそんな元気でいられるわね・・・」

「えっ?だって、私ココを掃除するの日課だったし、ちょっと懐かしくって♪」

「そんなもんなの?・・・はあ、暑い」

「伊織ちゃん、暑かったら先に戻っててもいいよ?」

「べ、別に平気よっ!それに、アンタを一人にしたら知らない人に着いて
 行っちゃいそうだし!」

「うう~、そこまで子供じゃないよ~。でも、ありがとう、伊織ちゃん♪」

「い、いや・・・別に・・・お礼なんて」


「……いや、相変わらず仲がいいな、あいつら」

「だね~」

さて、そうは言ってもそろそろ呼び戻さないと伊織がぶっ倒れそうだな。
ほっといたらやよいはいつまでも掃除してそうだし。

「おーい、やよいおり~!」

「えっ?あっ、絆さ~ん!」

「ちょっとアンタ!名前を省略してまとめないでよ!」

「さっさと中に戻ってこいよ。ジュースあるぞ~」

「わっ、ホントですかー!それじゃ、すぐに戻りまーす!」

「ホッ・・・やっと中に戻れるわ」

「何か言った、伊織ちゃん?」

「何でもないわよ?!さっ、早く休憩しに戻りましょ~!」

余程辛かったのか、伊織はやよいの背中を押してビルの入り口へと
入っていった。

数分後、やよいと伊織も事務所に戻ってきてのんびりとしていた。

「はふ~、冷たくておいしいです~」

「まさか本当に外の掃き掃除してるとはな・・・」

そういや、最初にやよいに会った時も掃除してたよな。

「ねえねえ、ハニー。本当に最初の765プロってこんなボロボロな
 所だったの?」

「ボロボロって・・・ああ、そうだ。俺がここに来た時は最初こんな所
 だったんだぞ」

「そうなんだ。ミキが765プロ来た時はあのおっきなビルだったから
 ちょっと意外かも」

そっか、美希と綾乃はあのでかいビルになってから事務所に
入ったんだっけか。

「私も美希ちゃんと同じね。でも、最初にこの事務所に連れてこられたら
 ちょっとびっくりするかもね」

「あの~、綾乃さん。私たち最初来た時はココだったんですが・・・」

「あ・・・ごめん、春香ちゃん」

「それにしても、さすがにここじゃ少し狭いよな。なんとかなんねーかな・・・」

元々狭い事務所にこの人数だし、あの時よりも2人増えてるしな。

「うーん、それなんですけど・・・もしかしたら何とかなっちゃうかも
 しれませんよ」

何か考えがあるのか、手を挙げたのは以外にも小鳥だった。

「社長、あのお話してもいいですよね?」

「うーむ・・・そうだな。それに今のみんななら大丈夫かもしれん」

そう言って社長が見せたのはとあるオーディションの案内。

「兄ちゃん、なになに?」

「えーっと、あいどる・・・あるてぃめっと?」

「・・・なんだ、アイドル同士で殴りあいでもしそうだな」

「おおー!じゃあ、まこちんの出番だ!」

「がんばれー!まこちんー!」

「……あのさ、ボクの事なんだと思ってるのさ」

「悪い、俺もお前なら勝てそうな気がした」

「プロデューサー!ひどいじゃないですかー!」

「さーて、黒崎君たち放っておいてっと……
 IU、アイドルアルティメイトね」

「うむ、何回かの予選を勝ち抜き、その先にある本選を勝ち抜いて
ようやく勝利を得る事が出来るアイドルの祭典だよ」

「へー、それでこれに勝つとそんなに良い事があるのか?」

「ああ、これに勝つという事はアイドル界の頂点に立つ事。つまり、
そのアイドルも事務所もその後、仕事に困るような事は無いだろうさ」

ふむ、なるほど。・・・って事は、負けた時のデメリットもでかそうだな。

「あの、これって負けちゃった時はどうなるの、社長?」

あえて俺が聞かなかった事を綾乃が聞きやがった。ある程度の
予想はできるが。

「それは・・・負け犬としてのレッテルだけが残り、そのアイドルは
 そのまま……」

「うっ、厳しいんですね、このIUって・・・」

「だから、私も社長も言わなかったんですけど・・・どうしますか?」

「……決まってる。こいつに出る、そんで勝ってくればいいんだろ!」

俺は迷わずにそう言ってやった。春香達は驚いていて、律子や綾乃は
ため息を付いていた。

「ちょっとプロデューサー。そんな簡単に決めちゃっていいの?」

「そうよ、もし負けちゃったりしたらどうするのよ」

「それじゃ、逆にみんなに聞くぜ。俺が負ける勝負に出ると思うか?」

「うーん、確かにプロデューサーさんと一緒だと負けた事無いですけど」

「そうね、不思議とプロデューサーが一緒だと負ける気がしませんね」

「ミキもミキもー!ハニーと一緒ならどんな相手でも負けないのー!」

春香、千早、美希がそう言うと他のみんなも頷いていた。

「はあ、しょうがないわね。そこまで言うなら、黒崎君がこのIUの担当
 プロデューサーおねがいね」

「なんだよ、綾乃はやりたくないのか?」

「ははは、無理。多分、胃に5,6個穴が開くわきっと……」

何か既に穴が開いてそうな顔してるな、こいつは。

「やれやれ、どうやら決まりの様だな」

「さてと、後はこの中の誰で出場するかだな」

「あれ?みんなではなくても、何人かで出るんじゃないんですか?」

律子の言うとおり、その方が勝率が上がるんだが……。

「そんな事したら、お前らで潰し合っちまうだろう。そんなの俺は
嫌だし、そんな事させたくない。だから、IU出るのは一人だ」

「そうですか・・・私もプロデューサーの意見に賛成です」

「ん、千早にそう言ってもらえるとは思わなかったぞ。甘い考えだって
 怒られるかと思ったんだがな」

「それはちょっと酷いです。前の私ならそう考えたかもしれませんが、
 今は春香や雪歩たちと競い合うのはいいとしても、そんな争いは
 したくありません」

『ち、千早ちゃん~・・・』

「ちょ、ちょっと、春香に雪歩。二人ともそんなにくっつかないで・・・」

「そんじゃ、さっそく決めるか……って、なんで俺にそんな
 熱視線を送ってくるんだよ、美希」

さっきからいつも以上に俺を見つめてくる美希。

「そ・れ・は~♪ミキを選んで欲しいからなの~♪」

「やっぱりか・・・。でも、悪いが今回美希はお休みだ」

まあ、実力的に考えれば美希を選んでもいいんだけどな。

「え~!じゃあ、やっぱり千早さん?だったらしょうがないけど~」

「おーい、ボク達は早くも戦力外なのかー?」

「でも~、確かに美希ちゃんや千早ちゃんには敵わないものね~」

美希がダメなら千早というのも妥当な判断だと思う。
でも、今回は普通のオーディションとは違うからな。

「千早も悪いが今回はパスだ。言っておくが、お前達の実力が足りない
 って言ってるんじゃないんだからな」

「そうですか。ちょっと残念ですが、それがプロデューサーの判断なら」

「じゃあ、ハニーは誰にするの?」

「ああ……それはお前だ」

そう言って俺は『そいつ』に指を指した。

「えっ?私!?し、しょうがないわね~!このスーパーアイドルの
伊織ちゃんにお願いするのは当然だとは思うけど~♪」

いやいや、お前じゃねえって。

「・・・伊織、3歩後ろに下がってもらえるか」

「1、2、3歩・・・これでいいの?」

「ああ。ちなみにお前じゃないからな」

「んなっ!?」

「俺が選んだのは、そこで選ばれないだろうって決め付けて
お菓子に手を伸ばそうとしてるお前だよ」

伊織の後ろに居た奴・・・それは。

「…………はわっ!!わたしですかーーー!!!」

驚いているのにそれでもしっかりとお菓子を放さないでいる
やよいが思いっきし絶叫していた。

『・・・えっーー!?』

ついでに他のみんなも絶叫していた。まあ、そのリアクションは想定内。

「わ、わたし、無理ですよ~!」

「そうか?俺はそうは思わないし、勝てる見込みがあるから選んだんだがな」

「うー、なんでやよいなの?ちゃんと教えてよハニー!」

「はいはい、説明するよ。まず、今回出るIUは予選を何回もやる。
そういう戦いにおいて、千早と美希じゃちょっと分が悪い」

「えー、なんで?ミキや千早さんなら全然楽勝だと思うよ」

「・・・まあ、最初の3戦目ぐらいまではな。そっからは厳しいと思うぜ」

「プロデューサー、どうしてそう思うんですか」

「ああ、千早も美希も正直ウチで1、2を争うくらいに実力はあると思う。
 でもな、二人の歌やダンスどんなにがすごくても、何回も見ていたら
 飽きると思うんだ。そうさせない様に俺が居るわけだが、さすがの俺も
 この連戦分お前達を生かせるアイディアが浮かぶ自身は無い」

「プロデューサーにしては珍しく弱気ですね」

「まあ・・・失敗できないからな。そこで俺が勝てると思った人選が
 やよいなわけだ」

「うーん、ミキやっぱり納得いかないよ。ミキがダメだったとしても、
 千早さんまでダメなんて・・・。こう言ったらアレだけど、やよいよりも
 ミキや千早さんの方が歌でもダンスでも上手いよ」

「う~ん、私も自分でそう思いま・・・」

「ちょっと美希!アンタ、やよいにケンカでも売ってんの!!」

いやいや、そこで何でお前が怒るんだよ伊織。

「美希は知らないかも知れないけど、高槻さんはこれでも歌とダンス、
 両方とも努力してかなり上達したのよ」

「確かに千早ちゃんの言う通りかも。最初は元気有り余ってて、そのせいで
 空回りしてたし」

「・・・春香には言われたくないと思うけど」

俺もそう思う。そんな事を考えていると、やよいが俺の顔を覗き込んでいた。

「ん、どうした?」

「あの、絆さんも最初の頃の私は酷かったと思いますか?」

……やめろ、そんな捨て犬みたいな目で俺を見るな。ここは正直に
言わなきゃいけない所なのに言えないだろうが。

「あ~・・・いや・・・」

「兄ちゃん、かっとうしてるね」

「だね。やよいっちに悪気がないのがさらにきょーあくだね」

くそう、亜美と真美め、好き放題言いやがって。でも、言わないとな・・・
よしっ。

「そうだな、最初の頃のやよいは・・・その・・・び、微妙っ!」

「そ、そうですか~。でも、しょうがないかもしれないです~」

・・・っく、みんなの『あんたのコメントの方が微妙だ』って心の声が
聞こえてくるぜ。

「まあ、そんなやよいだが、俺としてはまだまだ伸びる可能性があると
 思ってる。そんで、その姿を徐々に審査員に見せていく事で
 好印象を与える事が出来ると考えてるんだ」

「黒崎君、すごいわね・・・そんな事まで考えてたの?」

「まあな。他の奴でとも考えたんだが、俺はやよいの可能性を信じる事
 にしたぜ」

「うっう~!絆さんがそこまで私の事信じてくれるなんて、
 すっごく嬉しいですー!」

やよいもどうやらやる気になってくれたみたいだな。これで……

「うー!やっぱりイヤなのー!ハニーはミキと出るのー!!」

うわっ、いきなり美希がキレ始めた。

「お、おい、美希落ち着けって」

「ハニーは黙っててっ!」

「あ・・・はい」

「ちょっと、そこで黙ったらダメでしょう。美希ちゃん、そんなに黒埼君の
 決めた事を信じられない?」

「そ、それは・・・」

「私は美希ちゃんと同じで後から事務所に入ったけれど、そんな私から
 見ても黒崎君とやよいちゃんは最高のコンビネーションを発揮してくれると
 思うわよ。いままでも、勝つのが難しいオーディションとかも二人なら
 勝ってきたじゃない」

「そうだけど……千早さんもそれでいいの?」

「私もプロデューサーと高槻さんを信じるわ。何の根拠も無いのだけれど、
 不思議とあの二人だとどんな厳しい勝負も乗り越えてしまうから」

綾乃と千早の説得のおかげか、美希も少し落ち着いたみたいだ。

「ほら、黒崎君も何か言ってあげなさい」

「あ、ああ・・・。美希、お前には悪いと思ってる。でも、今回はやよいじゃ
 なきゃダメなんだ。だから・・・」

「うう~!もういいよ!ハニーのバカー!バカー!!目つき悪いー!!!」

主に最後の一言で俺にトドメを刺して、そのまま美希は走って事務所を
出て行ってしまった。

「あの~、絆さん。私、やっぱり美希さんと変わっても・・・」

「……いや、いい。ちょっと厳しいかもしれないが、美希には少し頭を
 冷やしてもらおう」

「本当にいいの、黒崎君?」

「いいよ。・・・それにしても、何でまたあいつ怒り出したんだ?ワケが
 分からないよなー」

と、俺が言うと何故かものすごく冷たい視線をみんなから浴びせられた。
うおっ、あのあずさや小鳥まで俺をにらんでる。

「お、俺が何か悪い事言ったの・・・か?」

……やべえ、さらに冷たい視線が飛んできた。

「えーっと・・・やよい、これからIUに向けてレッスンが厳しいかもしれないが
 頑張ってくれよ」

「あっ、はい!わかりましたー!」

「それじゃ、早速だが第一予選まで時間が無い。それまでに急いでお前に
 覚えてもらう事があるから、明日から頼むぞ」

「はーい!私、美希さんや千早さんみたいにすごくないかもしれないですが、
 それでも全力でがんばりまーす!」

「どうやら、やっと話がまとまったみたいだし、そろそろ事務所の整理に
 戻ってもらえるかね?」

「社長・・・居たのか?」

「居たともさ・・・ずっと。まあ、美希君の事は黒崎君の言うとおり、しばらく
 一人にしておこう。なーに、あの美希君の事だ、すぐに元気になって戻って
 来るさ!」

「そうだといいですけど・・・。綾乃さん、本当に大丈夫なんでしょうか」

「さあね。その辺は原因を作った本人に聞いてみた方がいいかもね」

そう言い、綾乃と小鳥は俺の方をジトッとした目で見た。

「あの、絆さん。顔色が悪いですけど大丈夫ですか?」

「あ、ああ・・・たぶん平気だ。は、はは・・・はあ」

結局、俺のせいなのかどうかよく分からんが、
その日、美希は戻ってこなかった。


……それから1週間経った。

「黒崎君!もう1週間も経つというのに美希君から何も連絡は
 無いのかね?!」

「・・・おい、1週間前にすぐに戻ってくるって言ったのはあんた
 じゃなかったか?」

社長の言うとおり、美希の奴とはあの日以来連絡が着かなくなっていた。

「まったく、あのバカ・・・」

「あの~、絆さん。美希さん、大丈夫なんですか?」

やよいも心配そうな顔をして俺に聞いてきた。

「まあ、大丈夫だとは思う。しかし、やよいは美希に結構ヒドイ事言われた
のに、そんでも心配してやってるのか」

「はい。だって、美希さんの言ってる事はもっともだったし、美希さんも
 絆さんの事大好きだからあんな事言っちゃったんだな~って分かって
 ますから」

「・・・お前って本当にいい子だよなー。他の奴に見習わせたいぜ」

そう言って俺はいつもみたいにやよいの頭を撫でてやった。

「えへへ~♪」

そんな事をしていると、小鳥が息を切らせながら俺達の所へやってきた。

「社長にプロデューサーさん!大変ですよ~!!」

「ど、どうしたのかね、音無君!?」

「いいから、こっちに来てください!早く~!!」

「なんだか分かんないが行ってみるか?」

「は、はい~」

俺とやよいと社長は小鳥にTVの前まで連れてこられた。
そこには春香達も集まっていた。

「お前らまで集まって・・・どうしたんだよ?」

「プロデューサーさん!大変なんですってば!」

春香の指差した先にはTV。何か特番をやってるみたいだが。

「『961プロ、新人アイドル発表記者会見』って、961プロって何だ?」

「……黒井」

ん?何か社長の様子がいつもと違うな。

「社長、何か知ってるのかよ?」

「あ、ああ・・・。961プロダクションは最近売り出し中の大きなアイドル事務所
なのだよ。特にその経済力はウチとは比較にならないほどだ・・・だが」

「だが?」

「社長である黒井の仕事ぶりは少々強引で、やりすぎな位だとも聞いている。
 ・・・変わっておらんようだな」

なんか、その黒井社長の事をよく知ってる口振りだな。
後で聞いてみるか。

『では、我が961プロの所属アイドルに自己紹介をしてもらおうかな』

「・・・なんだあの変なおっさんは」

「あれが黒井社長ですよ、プロデューサーさん・・・」

変なヒラヒラした服を着た黒井社長に言われ、最初に画面に映ったのは
黒く長いボサッとした髪をポニーテールにした女の子。

『自分の名前は我那覇 響!自分、今度のIUで優勝を狙っているから
 みんなよろしく!』

次に出てきたのは銀髪が目を引くお嬢様みたいな子。

『私の名は四条 貴音。私は自分がトップアイドルに事が宿命だと
 思っております。それがウソでない事を証明してみせましょう」

(二人とも人の目を引くビジュアルだな。少なからず、見た目は・・・)

俺がそんな風にこれから敵になるであろう相手を分析していると、
次にTVの画面に映し出されたのは……

「なっ!?あいつは!!」

「はわっ!美希さんです~!!」

俺とやよいは驚いて同時に声を上げてしまっていた。一方、社長は一人
険しい表情でそれを見ていた。・・・いや、見ていたのは美希じゃなく、
黒井社長の方か?

『はーい!ミキの名前は星井 美希っていうのー!ミキもIUで優勝したいから、
 応援よろしくなのー!』

「……えーっと、つまりどういう事なんだ、コレ?」

「どういう経緯かはわからんが、美希君は961プロに引き抜かれた、という
 事だろう。・・・黒井め、やってくれたな」

「マジかよ……」

まさか、こんな事になるとは思わなかったぞ。・・・なんだ、丁度1週間前の
様に冷たい視線が俺に飛んできた。

「な、なんだよ!俺が悪いのかよ!?」

「だって、兄ちゃんがミキミキに冷たくしたからじゃん~」

「そうだよね~」

「うーん、さすがに今回はボクも美希に同情しちゃうかも」

おいおい、味方無しかよ俺。

「絆さん、どうするんですか~?私、美希さんと勝負しなくちゃいけないん
 ですか?」

「・・・ふ、ふふふ、そうだな、そうだとも!やよい、美希に勝つぞ!」

「は、はいっ?」

「美希の奴、もう頭にきた!2度と俺に逆らえないくらいにケチョンケチョン
 にして連れ戻してやる!」

「2度と逆らえないくらいって・・・プロデューサーさん、なんて大胆な」

「小鳥さん、ソコに反応するのはどうかと思うわよ・・・。はあ、やよいちゃんも
 大変ね」

「絆さん、私で本当に美希さんや他の人達に勝てるんでしょうか・・・」

「勝てるさ。俺の事は言うまでも無いけどさ、もっと自分を信じてやれよ」

「絆さん……わかりました!私、どこまで出来るか分かりませんけど
 おもいっきり美希さんにぶつかっていきます!」

「ああ、約束する。お前の事を必ずIUで優勝させてみせる」

「はいっ!じゃあ、指切りの変わりに・・・ハイ、ターッチ!いぇい!」

俺はやよいとハイタッチをして、やよいをIUで優勝させるという約束を
交わした。やよいやみんなの前では言えないが、正直この約束を
叶えるのは厳しいだろうなと思った。何せ、相手はあの美希とまだ
実力は未知数だがかなり高いであろう961プロの二人だ。

さすがの俺でも今回はやばいかな。・・・でも。

「よーっし!がんばるぞー!おー!」

俺はやよいを信じると決めたんだ。だから俺も全力でやるしかない。
やよいとの約束を守るために。


……IU 第一次予選まで、あと2週間。

つづく。
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