・・・皆さんこんにちわ。私は765プロに最近入ったばかりの新人プロデューサーです。私が今いるのはラジオ番組の収録スタジオです……それはいいんですよ。お仕事ですし……
「千早」
「あずさ」
「春香」
「雪歩の……」
『レディオdeアイマSHOW?!』
でも、でも……
「今回は、私、如月千早とあずささんで出演しているラジオ番組と、同じく私と、春香、雪歩で出演しているラジオ番組のコラボレーション企画でお送りしています」
なんで……
「今回は?、スペシャルゲストさんにも来て頂いてます?♪」
私が……
「そうですよー!それでは、紹介しましょうー!」
「はい。この度、私たちの事務所に入ったプロデューサーさんです」
出演者側に座ってるの???……
「ほら、プロデューサーさん。みなさんに挨拶しないと」
うう、春香ちゃん。私、こういうの初めてだって分かってる?……分かってる??うう……、でも、ここでしっかりした所見せないと、プロデューサーとしての威厳にかかわるよね。よし!
「えっと!みなさん、こんばんわ!765プロでプロデューサーをやっています佐倉綾乃です!よ、よろしくおねがいします!」
うう……、めちゃくちゃ早口だったよ?……。恥かしい……
「え?と、佐倉さんってお呼びしてもいいですか?プロデューサーさんだと、もう一人の方とどっちの事だか分からなくなっちゃいますから?」
「そうですね。じゃあ、私は綾乃さんって、呼んでもいいですか?」
「あ、えっと。好きに呼んでくれて構わないですよ。その方が私も楽ですから」
それに、まだプロデューサーとしては半人前だし。でも、名前で呼ばれる方が私は好きかな。馴れ合いって言われるかもしれないけど、これが私なりのやりかただし。
「じゃあ、私も綾乃さんって呼びますね。」
「それじゃあ、私は佐倉さんで。さて、呼び方も決まった所で最初のコーナーです」
う?ん、流石に千早ちゃんは名前で呼んでくれないか。まあ、この子は大人っぽいからな?……って、私が子供っぽいのかな。なんて考えていると最初のコーナーが始まってしまった。
「綾乃さんも一緒に……せーの」
え?私もなの!えっと、えっと……
『ふつおたー』
ほっ、うまく言えた。でも、流石にみんな慣れているな?。いけない、いけない。私も頑張らないと。
「では、最初のメールです。ペンネーム、二つ星さんからのメールです。みなさんに質問があります。アイドルとして、日々気をつけている事はありますか?よかったら教えてください。……では、春香はどう?何かある」
お、春香ちゃんは何て答えるのかな?春香ちゃんだと、歌のレッスンを欠かさないとかかな。
「う?んと、素の自分を見られない様にするとか……な?んて言ってみたり!……あれ?何でみんな無言なの。千早ちゃん、何か言ってよ?」
「……あずささんは何かありますか」
「あ?ん、千早ちゃんが無視した?!綾乃さん、どう思いますか?」
うっ、そこで私に振るんだ、春香ちゃん。
「……………えっと」
「佐倉さん、答え難かったら言わなくてもいいですよ」
「は、はい……」
ごめん、春香ちゃん。コメントのしようが無かったわ。……だって、たまに別人が乗り移ったようになるんだもの、春香ちゃん。……あれは、ファンの人には見せられないかも。
「私ですか?……、そうですね、とりあえず道に迷わないようにするのを心がけてます」
「そういえば、あずささん。このスタジオに来る時も時間掛かってましたね」
「そうなのよ、雪歩ちゃん。佐倉さんが見つけてくれなかったら、ここにたどり着けなかったかもしれませんね?」
「あはは……、お手柄でしたね綾乃さん。危うく、出演者が一名居ないままONAIRする所でしたよ」
ええ、春香ちゃんの言うとおり、本当によかったわ。でも、どうやったらあんなに正反対の場所に行くのかしら……。謎だわ、あずささんって。
「えっと、千早ちゃんは何かあるのかな?」
「私は……いつも通りですね。歌のレッスンやトレーニングを欠かさないのが、ファンの方々をがっかりさせない事だと思っています」
う?ん、15歳とは思えない発言……千早ちゃんはすごい。
「でも、千早ちゃん。あんなに筋トレばっかするのもどうかと思うよ。私は、腹筋が割れた千早ちゃんなんて見たくないよ?」
「春香、変な事言わないでよ。さすがに、無駄に筋肉が付く様なトレーニングはしてないから」
その割には、腹筋200回とか普通にこなしてるのよね……。私には無理だな?。
「次は、雪歩ね。何か気を付けている事はあるかしら」
「私は……私は特に。すいません……私だけ何も無くって。私なんて、穴掘って埋まってますー!」
「はいはい!埋まっちゃだめよ、雪歩ちゃん!」
まあ、いつも通りに埋まろうとする雪歩ちゃんを、私は押さえつけた。コレさえなければもっといい子なのにね、雪歩ちゃんは。
「では、佐倉さんにも質問です。プロデューサーとして、何か気を付けている事はありますか?」
「え!私にも聞くの!……えっと、そうだな?。つまらないけど、いいの?」
「私は是非、聞きたいです?。ね、みんなもそう思いますよね??」
うっ、みんな頷いてる。う?ん、まあ、しょうがないか。
「えっと、基本的な事なんだけどね。やっぱり早寝早起きかな。どんな仕事でもそうなんだけど、やっぱり、しっかりと睡眠をとらないと、いい仕事は出来ないかなって、私は思うの……。あ、ごめんね。面白くなかったかな」
「そんな事ないです。とってもいい事だと思います。私たちも、見習うべきだと思いますし」
「そうだね。こういう仕事してると不規則になりがちだからね。基本に戻るって言うのも大切だよね」
あらら、意外と高評価。ほっ、よかった……
「それでは、次のメールです。ペンネーム、ドゲザクさんからです。皆さんは、今のお仕事に就いていなかったらどんなお仕事がしてみたいですか」
「う?ん、考えた事なかったよ、そんな事……。あずささんは何かありますか?」
「そうね?……。やっぱり、お嫁さんになりたいです」
あずささんらしいな。芸能界に入るきっかけだって、運命の人に見つけてもらう為って言ってたものね……。よし、ここは私からも質問してみよう。
「んと、雪歩ちゃん。雪歩ちゃんは何かあるかな?」
「え?えっと……そうですね、お茶の専門店とかはやってみたいです。毎日、いろんなお茶に囲まれてお仕事するの、楽しそうなので」
ん?、かわいい答えだな?雪歩ちゃん。……持って帰りたい。
「それじゃあ、綾乃さんはどうですか」
う、質問を返されてしまった……。そうだな?。
「私は……幼稚園とかの先生になりたかったかな」
「それは意外ですね。理由をお聞きしてもいいですか?」
あれ?千早ちゃん、意外にも興味津々ね。
「そうね、やっぱり子供と一緒にいるのが好きだからかな。大変だろうけど、やりがいはあると思うの。あっ!でも、このお仕事もやれて良かったと思ってるわ。だって、かわいいみんなと一緒に居れるんだから?」
「あはは……。千早ちゃんは何かある?」
「私は……、考えられませんね。やっぱり、歌を歌っていたいですから」
千早ちゃん……、お家の事とかあるからね……。ちょっと空気が重いかも。ここは私が何とかしなきゃ!
「えーっと。春香ちゃんは他のお仕事って何かやって見たいのあるかな?」
「私ですか?……。あっ、あります!歌の先生とかやってみたいです!」
「歌の先生ね。そういえば、春香ちゃんは子供の頃に、公園で歌ってたお姉さんに影響を受けて、アイドルになったのよね」
「はい。だから、アイドルじゃなかったら、あのお姉さんみたいになりたいです」
「そっか。千早ちゃんも、歌の先生とかできそうね……でも、レッスンが厳しくて、生徒さんが可哀想かな、ふふふ」
「うっ。それはちょっと酷いです、綾乃さん……」
よかった、ちょっとは空気が和んだかな。ほっ……
「それでは、次のコーナーです。次は、「プロデューサーをレッスン」です」
「今回は、特別にプロデューサーの綾乃さんにレッスンを受けていただきまーす!」
…………はっ?
「き、ききき、聞いてないよ、そんな事??!!」
「はい、言ってません。いつも、レッスンを見て頂いているプロデューサーを、私たちがご指導したいと思います」
千早ちゃ?ん、そんなあっさり言わないで?……。うう、あの先輩プロデューサー(私より年下だけど)、何も言わなかったじゃない。どうしよう、何をやらされるんだろう。
「それでは、心の準備はいいですか?」
「えっと、あずささん。みんなが、いつも着ている様なステージ衣装で踊れとかは無しですよ」
「えと、さすがにそこまでは……。それにリスナーの皆さんには見えないですし」
「これがTVだったら、やらせてたかな?……」
うっ、黒春香ちゃんが出てきちゃった。でも、よかったラジオで……
「それでは、今回やって頂くレッスンは……「くじ引きボーカルレッスン」です」
「説明します。箱の中に、私たちが普段歌っている歌の曲名が書かれた紙が入ってます」
「それを、一枚引いてもらって、その歌を歌っていただきます?」
う?ん。これって、運がいるよね。難しい歌に当たらないといいんだけど。
「それでは、綾乃さんどうぞ」
「あ、はい……」
「ちなみに、そこで雪歩の頭を掴むとかボケは無しですよ、綾乃さん」
………だめか。ボケ倒そうと思ったんだけどな?……。しかたない、腹を括りますか!
ガサガサ……
「コレにするわ!……はい、千早ちゃん」
「どうも。それでは、佐倉さんに歌っていただく曲は……「蒼い鳥」です」
あちゃ?、一番難しいのが来ちゃったよ。さて、どうしますかね。
「レッスンの評価は、パーフェクト、ノーマル、バットで評価されます」
「そして、今回見事パーフェクトを取ると……綾乃さんにはご褒美がありますよー!」
「え?そうなの。それも聞いてない……って、言ってないものね」
「そういう事です。それでは、準備はいいですか佐倉さん」
うう、容赦ないよ?千早ちゃん……
「じゃあ、歌うけど。どうなっても知らないからね」
「それは、どっちの意味なのかしら??」
「さあ?もし、すごく歌がヘタだったらどうしましょう……」
「まあ、放送に耐えられなかったらカットで」
「春香、それはちょっと酷すぎるわよ……」
む?、みんな好き勝手言ってくれるわね。しょうがない、久しぶりだけど全力で歌ってみるか。
……………数分後。
「ふう?……。つかれた?、って、曲が止まらなかったから最後まで歌っちゃったけど良かったのかしら?……あの、みんな。何で無言なの?」
あれ?そんなにヘタだったかな。確かに歌うのは久しぶりだったけど……
「す、すっごく感動しました?!綾乃さん、歌が旨いじゃないですか?!」
「私もです……。千早ちゃんに負けないくらいの迫力がありました」
「そうね?。そのせいで、止めるタイミングをスタッフさんが忘れちゃった程ですもの」
「私も、ここまでとは思っていませんでした。これは、文句なしですね」
『パーフェクトレッスンーー!!』
あう、パーフェクト取ってしまった……。ちょっと本気でやりすぎたかな。
「でも、何故あんなに歌を。何かやってらしたんですか?」
「ん?、隠してたわけじゃないんだけどね。実は私、音大の出身なの」
「そ、そうなんですかー。どうりでうまいわけだ?」
「でも、それだけであれ程……」
「う?んと、これも隠してたんじゃないのよ。ついでになんだけど、私、絶対音感の持ち主だったりするの」
「ええ?!それって、すごいことです?!」
「なるほど、だから、音程やメロディーの合わせ方が完璧だったんですね」
そう……、そのせいもあって、私は半ば無理やりに音大に入れさせられたんだけどね。でも、こんな所で役に立つとは思わなかったけど。人生、何があるかわからないな?。
「それでは?、お約束のご褒美です?。この箱の中から一枚引いてください」
そうだった、パーフェクトだしたら何かあるんだった。でも、何だろう?またくじ引きだ……
ガサガサガサ……
「はい、一枚引いたわあずささん。コレをどうするの?」
「はい。その紙に名前が書いてある人に、一つ命令ができます?」
「え!?そうなんですか!」
「はい?。私も、さっきスタッフさんから聞いたばかりです」
「えっと、誰の名前が書いてありましたか、綾乃さん?」
私はさっき引いた紙を広げて、そこに書かれていた名前を読み上げた。
「如月千早さんでーす!……さて、覚悟はいいかな、千早ちゃん」
「あの、法に触れない程度にお願いします……」
「ちょっと、千早ちゃん。人をそんな極悪人みたいに?……」
まあ、ちょっと考えたけど。それはさておき、どうしようかな。思い切って「お姉さま」とか言わせて見ようかな……。だめだ、理性を保てる自信がない。それじゃあ、亜美ちゃん達みたいに「お姉ちゃん」とかもいいかな……。いや、やっぱりアレにしよう。
「千早ちゃん。これから、私の事を名前で呼ぶ事。番組中だけじゃなくって、これからずっとね。「佐倉さん」なんて他人行儀な呼び方はダメね、約束よ♪」
「は、はあ。佐倉さんが言うのなら」
「むう、千早ちゃん。ちがうでしょ?」
「……で、では。綾乃さん……これでいいですか?」
「うん。これからもそれでヨロシクね」
今の千早ちゃん、かわいいな?。思いっきり抱きしめたいけど、ガマンガマン……
「じゃあ?、私も綾乃さんってお呼びしますね。私だけ、仲間はずれなんて寂しいですから?」
そっか、あずささんも苗字で呼んでたんだっけ。なんか、得した気分かも。
「でも、それでよかったんですか?もっとすごい事を言うと思ってたのに私」
「う?ん、そうしたかったけどね。そこは大人の事情よ、春香ちゃん」
「よ、よかったね千早ちゃん。それで済んで」
「ええ……、軽く命拾いした気分ね」
そ、そこまでなの?……まあ、確かに色々考えたけど。
「あら?そろそろ時間みたいですね?」
あれ?もうそんな時間なんだ。……って、私のせいで時間押したのかな。だとしたら、ちょっと調子に乗りすぎたかも。
「それでは、そろそろお別れの時間です」
「それじゃあ、最後に我らがプロデューサーから一言いただきましょー!」
うわっ!春香ちゃん、いきなり何をー!……う、みんなしてそんな期待の眼差しを送られても。 えーい!こうなったら、思いのままに言ってやるわよ?……
「えっと……、今日はここにお邪魔しちゃってごめんなさい。私は、本来裏方の人間ですので表にあんまり出てこない方がいいのですが、ここに座ってみて、みんなの大変さや頑張りが見れたのは嬉しかったです。それと、春香ちゃん、千早ちゃん、雪歩ちゃん、あずささんが皆さんに愛されてるのを感じました。私はこれから、そんなファンの方々をガッカリさせない様に、この子たちをプロデュースして行きたいです。どうか、これからもこの子たちをよろしくお願いします」
「ありがとうございました、綾乃さん。私たちも、プロデューサーに負担を掛けない様に精進します」
「はい、私もがんばりますー!綾乃プロデューサー、これからもお願いします!」
「こ、こんな私ですけど……、ファンの人達や、プロデューサーの為にも頑張りたいです」
「私もよ。ふふ、いいプロデューサーにめぐり合えて、私たちはみんなしあわせね?」
みんな……。なんか、本当にこの仕事をやっててよかったと思う。私、絶対にみんなをもっと上のアイドルにしてみせるわ……、必ず。
「それでは……お相手は如月千早と」
「天海春香と?」
「萩原雪歩と……」
「三浦あずさ。それと?」
「あ、はい。プロデューサー、佐倉綾乃でお送りしました」
……これでいいのかな?スタッフさんが、チェックしてる……
「はい、OK?!おつかれさまです?」
お、終わった……。もうダメかも……。
ガンッ!
「わわ!綾乃さん、どうしたんですか!急にテーブルに突っ伏して……」
「具合でも悪いんですか、綾乃さん」
「あ?……、大丈夫よ雪歩ちゃん、千早ちゃん。ちょっと、緊張の糸が一気に100本ほど切れただけだから……あはは」
も、もう二度とやらないわよ。寿命が10年は縮んだわね?……
「おつかれさまです、綾乃さん。でも、結構よかったと思いますよ。ね、あずささん」
「そうね?。また、一緒に出てみたいです♪」
「うう、あずささん、許してください?。私にはアイドルは向いてないです?」
はあ、本当に疲れた。でも、ちょっとはいい経験になったのかな?
「でも、最後のコメントは本当によかった思います。あずささんの台詞ですが、本当に私たちはしあわせだと思います」
「はい。私、がんばりますから。どんな事にも怖がらないようになります」
……あ?、もうだめだ。限界?……
「二人とも……ありがとーー!!」
「きゃ!あ、綾乃さ?ん。いきなり抱きつかないでください?」
「ちょ、ちょっと、綾乃さん!って、春香!なんで一人だけ逃げてるのよ!」
「ごめん。二人の犠牲は無駄にしないよ……」
ちぇ、春香ちゃんは逃がしたか。でも、二人でもいいわ?。あ?、癒される。
「……綾乃さん、私にはしてくれないんですか?」
「いや……、あずささんはその……私がかなり恥かしいので」
それに、あずささん大きいし……。そんなことしたら、こっちが凹んじゃうし……。うう、あずささん、そんなに悲しそうな顔しなくても。
……765プロ事務所
はあ、やっと帰ってこれたわ。なんか、今日は一日が長かったわ……
「おお、綾乃君。今日は大変だったみたいだね、お疲れ様」
あ、社長だ。……相変わらず、黒いな?。あ、人がじゃなくって、見た目がね。
「みんな、今日もお疲れ様。どうだったかね、綾乃君の仕事ぶりは?」
それを聞きますか……。そういえば、今日の仕事を持ち込んだのは、社長だった。
「ええ、とてもよかったですよ。まあ、あのクセさえなければですが……」
「そ、そうですね。千早ちゃんはまだいいけど、私はしょっちゅうですし」
「雪歩、そうなんだ……。でも、お仕事の方は問題ないですよ、社長。他のスタッフさんにも丁寧な対応とかもしていたし」
「そうね。私も、大人の女性として見習いたいわ?」
そ、そんなに褒められる様な仕事したかな?普段どおりなんだけどな。
「そうか……。では、これからもみんなで綾乃君を助けてあげてくれたまえ、頼むよ」
『はい』
う、なんか、それって逆じゃないかな……。まあ、まだ新人だからしょうがないけど……。でも、まあいいか。
「みんな。私、まだまだ未熟者だけど……、こんな私でもプロデューサーって認めてくれる?」
「あたりまえですよ、綾乃さん!それに、もう765プロの一員じゃないですか!」
「それに、最初から何でもできる人なんていません。これから、頑張っていきましょう」
「私も、足手まといにならない様にがんばります……」
「そんなに気にする事はないみたいですね、綾乃さん。もし、何かあったら相談に乗りますから、がんばってください」
……う、泣きそうかも。ラジオの収録の時あずささんが「プロデューサーにめぐり合えてしあわせ」って、言ってたけど……
「あの……、社長」
「ん?なにかね、綾乃君」
「私、この仕事にめぐり合えて、本当にしあわせです!それも、社長が私をここに呼んでくれたからだと思います……、本当にありがとうございます」
私は、社長に心から感謝した。あのまま大学にいても、きっと、今ほどやりがいのある仕事には就けなかったと思う。だから、精一杯のお礼を私は言った。
「ははは、気にしないでくれたまえ。でも、私の見る目に間違いは無かったようだな。これからも他のみんなと頑張ってくれたまえ」
「はい!私みんなの為にもがんばります!……よーし、私はまだ仕事が残ってるから、みんなは遅くならない内に帰る事。いいわね」
「はい。お疲れ様でした、綾乃さん」
「うん……。ありがとう、千早ちゃん。約束守ってくれて」
「いえ、綾乃さんはプロデューサーとしての姿勢を示してくれました。それへの感謝の気持ちです。お気になさらず」
「綾乃さん、無理しないでくださいね?」
「そうですね。プロデューサーの綾乃さんが倒れちゃったら、意味無いですから」
「春香ちゃん、あずささん。ありがとう、気をつけるわ」
「それでは、お疲れ様です。本当に無理はしないでくださいね、綾乃さん」
「雪歩ちゃんもありがとう。だいじょうぶよ、今の私は無敵状態だから。じゃ、おつかれ、みんな!」
さあ、応援してくれたみんなの為にも、もうちょっと頑張らなきゃ!やるぞ?!
……
…………
……………
「行ったか、新人は?」
「あ、プロデューサーさん。いつからそこに?」
綾乃がいなくなってから出てきたのは、765プロに居るもう一人のプロデューサーである。
「やれやれ、心配無用だったか」
「意外ですね。プロデューサーが、綾乃さんの事を心配するなんて」
「まあな。ちょっと、あのチビッコ二人に頼まれたからな……」
「それって、亜美ちゃんと真美ちゃんですね」
亜美と真美は、同じく765プロ所属のアイドル候補生である。そして、綾乃が受け持っている候補生でもある。
「この前、いきなり最初のオーディションで落ちちゃったって……」
「雪歩の言う通りだ。その事、結構気にしてたみたいなんだよな……。それで、あの二人がちょっと見てきてくれって」
「そうだったんですか?。でも、もう平気そうですね」
「……まったく、あの社長には勝てないな」
「え?プロデューサー、何か言いましたか……」
「なんでもない。じゃ、俺は帰るな。お前らも気をつけろよ?」
そういって、プロデューサーの青年は帰っていった。
「ねえねえ、千早ちゃん。今日のお仕事さあ……」
「ええ、私も多分同じ事を考えてるわ。……社長、あの人はやっぱり侮れない人ね」
「どういう事ですか?私には……」
「雪歩ちゃん、今日のお仕事は、綾乃さんに元気を出してもらうために、社長さんが用意したって事よ?」
「そ、そうなんですか!……社長って、只者じゃないですね」
「うん……。本当に、社長恐るべし……」
春香がそう言うと、みんな一緒に頷いてしまっていた。これが真実かどうかは、社長しか分からなかった……
「……あれ?私たちって、もしかして利用されたのかな!」
END
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