春屋

こちらはゲーム「THE IDOLM@STER」「東方project」を応援しているサイトです。管理人のプレイ日記や、SSが置いてあります。
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雪降る聖夜の小夜曲 ~serenade~

これはアイドルマスターの二次創作SSです。
多少設定とは違うかもしれませんが、気にしない方はこのまま前進。




「みんな、飲み物を手にしているかね?それでは、メリークリスマスー!」

『メリークリスマスー!』

カチンッ!カチンッ!

社長の声で、765プロの会議室に居る春香達と、プロデューサーの二人、
小鳥は乾杯をした。

「しっかし、いいのか社長?ここ使って……」

プロデューサーの青年が言う「ここ」とは、765プロの会議室である。
普段は、仕事や大事な話がある時にしか使わないのだが、社長の好意により
「765プロクリスマス会」の会場として使っている。

「かまわんよ。キミも、今日は仕事の事は置いておいて、楽しむといい」

プロデューサーの肩に手を置いてにこやかに社長は言った。
そんな社長とは裏腹に、律子はちょっと不機嫌そうだった。

「まったく、こんな事で経費を無駄遣いして……」

「まあまあ、律子さんも、今日ぐらいはお仕事から離れて、楽しみましょう。ねっ?」

綾乃が律子をなだめると、ため息ながら「しかたないな~」と、一緒に楽しむ事にした。

「ねえねえ、兄ちゃん!サンタさんってさあ、煙突が無い家にはどうやって入ると
 思う?」

「亜美、唐突だな……そうだな、やっぱり何か不思議な力でも使って……」

「え~!違うよ兄ちゃん!きっと、すごいカギ開けテクニックを使うんだよー!」

「真美はね~!きっと、常人には見えない速さで配ってると思うんだよ……」

「……サンタはピッキングもクロックアップもしねえって。というか、お前ら夢が
 無さすぎだってーの!」

亜美に質問された時、「子供心を傷つけたらいけないだろうな……」と思って、
それらしい回答をしたのに、まさに現代っ子な答えを付き返されてプロデューサーは
ちょっと怒っていた。

「あはは。相変らず、亜美ちゃん達に遊ばれてますね、プロデューサーさん」

「彼も、大変ね。……あれ?どうしたの、雪歩ちゃん」

「あの、綾乃さん……いい加減はなしてください~」

と言って、先ほどからずっと綾乃に捕まっている雪歩がパタパタ暴れてみるが、
綾乃がそれを逃がすはずも無かった。隣に居る小鳥は、それを見て楽しんでる
ようだった。

「ん~、まだだめ~。あっ、やよいちゃん、ちょっと来てもらえるかな?」

綾乃は丁度、前を通りかかったやよいに声を掛けた。もちろん目的は一つ
なのだが。

「はい?なんですか、綾乃さん」

何も知らずに綾乃に近づくやよい。しかし、それを伊織がすぐさま止めに
掛かった。

「だめよ、やよい!まったく、あんたも雪歩みたいになりたいわけ?」

「あっ……ありがとう、伊織ちゃん~♪」

「ちぇ、雪歩ちゃんはこれで捕まるのにな~……」

綾乃は残念そうにそんな事を言った。それを聞いた伊織はため息を吐きながら
雪歩に言った。

「あんた……毎回騙されてる訳?」

「う……うん。うう~、こんな私なんか、穴掘って、雪に埋もれてます~!」

そして、いつも通りに穴を掘ろうとするが、綾乃がガッチリと雪歩を抱きしめている為、
それもままならなかった。

「あ、あうぅ……、放してください~!小鳥さんも、見てないで助けてください~!」

「ん~っと、綾乃さんも楽しそうだし、もうちょっとそのままで」

小鳥に見放された雪歩は、抵抗むなしく綾乃に拘束されたままであった。

「いいですね~、雪歩ちゃんは。私なんて、まだ一回も抱きついてくれないんですよ~」

あずさがちょっと意味不明なヤキモチを焼いているのを隣で見ていた真は、
ただ苦笑いをするだけであった。

「あずささん、抱き付かれたいんですか?でも、大変ですよ。一回捕まると、ボクでも
 逃げ出すの難しいんですから」

「そうなの?ん~、じゃあ、真ちゃんでガマンするわ~。それ~!」

「わっ!あずささん、ちょっと!」

そう言って、あずさは真の事を抱きしめた。すると、何故か真は静かになってしまった。

「あら?どうしたの、真ちゃん?」

「……いえ、その。あずささんとの差に悲しくなっている所です」


「あいつらは何やってるんだか……」

「はっはっは、仲良き事はいい事かな」

プロデューサーと社長は、それを離れて見ていた。そこへ、春香がやって来た。

「プロデューサーさん、なにしてるんですか?」

「いや、ちょっとアホなやり取りを見ていただけだよ……」

春香は、現在も捕まっている雪歩と、あずさに抱擁され悲しそうな真を見て、
プロデューサーに思い切って言ってみた。

「プ、プロデューサーさん!私、プロデューサーさんなら、……その、壊れるくらい
 抱きしめてもいいですよー!……な~んて、言ってみたりして~!」

「お前は、何をいきなりrelationsな事を言ってんだよ。……そうだな」

プロデューサーは春香の頬に手をやって、目を見て言った。

「お前がいいなら、望み通りにしてやるぜ。ただ、その時は一晩中傍に居て
 もらうからな」

プロデューサーが、出せる限りの男前ヴォイスで春香にそう呟いた。だが、
次の瞬間には、律子におもいっきりトナカイのぬいぐるみを投げつけられていた。

「あんたは!もうちょっと考えて発言しなさいって!」

「痛ってーな、冗談だって。俺が春香を相手にすると思うか?……ん?春香、どうした?」

春香は、さっきの台詞を言われてからしゃがみ込んで動かなくなっていた。
律子が春香に近寄ってみると……

「……あっ、鼻血出してるわ。あんたが、あんな事言うからよ」

律子は春香にティッシュを渡して、プロデューサーを睨んだ。

「あ~……悪かったな春香。大丈夫か?」

「は、はい。もう死んでもいいです……」

鼻血を出しているにも関わらず、春香は人生最大の喜びを噛み締めている様だった。
そんな時、プロデューサーは不意に腕を引っ張られた。

「ねえねえ、千早さんどこ行ったか知らない?」

プロデューサーの腕を引っ張りながら美希が聞いてきた。

「居ないのか?おかしいな、さっきまで居たのに……」

辺りを見回してみるのだが、やはり千早の姿は見当たらなかった。

「そうなの。でも、さっき見た時なんか暗い顔してたの。どうしたんだろうね?」

それを聞いたプロデューサーは少し心配になり、探しに行く事にした。

「社長、綾乃。ちょっと買出しに行ってくる……後は頼むな」

それを聞いて、社長と綾乃もプロデューサーの考えが分かったのか。

「うむ、気をつけて行くのだよ」

「急がなくていいから、気をつけてね」

そう言ってくれた二人に感謝しながら、プロデューサーは事務所を出た。


場所は変わり、ここは事務所の近くの公園。クリスマス会を抜け出していた千早は、
一人でベンチに座りながらずっと空を眺めていた。

「はあ……私は何をしているんだろう。みんなは、楽しそうにしているのかしら」

そんな独り言を言いながら、一つため息を吐いた。そんな千早に、一人近づく
人影があった。

「誰!?……って、水瀬さん?何故ここに……」

そこに居たのは、不機嫌そうな顔をした伊織だった。

「まったく、それはこっちの台詞よ!こんな、バカみたいに寒い所で何してるのよ。
 ……ほら、事務所に帰るわよ」

そう言って、伊織が手を差し出すのだが、千早はそれを取ろうとしない。

「……はあ。隣、勝手に座るわよ」

伊織が隣に座っても、千早は静かに俯いているだけだった。

「ふう……町の明かりが綺麗ね。そう思わない?」

「……」

「ちょっと、無視しないでよ千早」

「…………」

「……ちーちゃん、町のネオンが綺麗よ~♪」

「その呼び方はやめてください!……はっ」

千早はつい条件反射的に言葉を返してしまった事に、少し恥かしくなっていた。

「私を無視するからでしょ。それに、プロデューサーにそう呼ばれてるじゃない」

「あれは、勝手に呼んでるだけで……水瀬さんは、戻らなくいいの」

千早は、寒そうにウサギのぬいぐるみを抱きしめている伊織を心配して聞いた。

「そりゃあ、戻りたいわよ。でも、あんたが居ないと、他のみんなが心配する
 でしょうが」

「……そうかしら。私が居なくても、別に変わりは無いと思うけど」

「じゃあ、聞くけど。あんたは、私が居なくなっても平気?」

突然伊織にそんな質問をされ、千早は戸惑ってしまった。

「どう?私じゃなくても、春香とか雪歩、やよい……、プロデューサーが居なくなっても
 平気なの?そういう事よ……何を気にしてるんだか知らないけど、あいつなら
 こう言うわよ」

「あいつ……プロデューサーの事?」

「そうよ。きっと、「誰も千早が居なくてもいいなんて思っていない!」……てね」

伊織が笑顔で言うと、千早にもやっと笑顔が戻った。そこで、伊織は思い切って
聞いてみた。

「で、何を塞ぎ込んでいたのよ。私でよかったら、聞くけど」

「そうね。……水瀬さんは、クリスマスを家族で過ごした事ある?」

「あるけど。まあ、半ば強制的にだけどね。会社のパーティとかにも、出席させられた
 事もあったわね……」

伊織がげんなりそう言うと、千早は空を眺めてこう言った。

「私も、弟が居る頃までは家族でクリスマスを過ごしたわ。でも、もうずっと昔の様に
 感じるの」

「……そう。言っておくけど、私は同情はしないわよ」

「ううん、聞いてもらえるだけでも嬉しいから。何故かは分からないけど、急にその事を
 思い出してしまって……」

千早がそう言い終わると、伊織も空を見上げた。

「それで、居心地が悪くなったの?……はあ、あんたって奴はもう」

伊織が立ち上がり、千早の手を取って引っ張った。いきなりだったので、
千早も驚いている。

「ちょっと、水瀬さん……」

「いいから帰るわよ。いい、あんたはもう一人じゃないんだから。私は、家族が居るから
千早の気持ちなんて分からないわよ。でも、これだけは言える……今、ここに居ていい
 はずないわよ」

「えっ?」

「辛かったら、春香でも雪歩でも、なんだったら、プロデューサーにでもぶつければ
 いいじゃないの。きっと、みんなお人よしだから、相談に乗ってくれるって、にひひ♪」

伊織に笑顔でそう言われると、今まで我慢していた何かがあふれ出たかのように、
千早は涙を流していた。

「ちょっと!私は、泣かせるために言ったんじゃ……」

「ちがうの……嬉しくって、それで。それと、自分はなんてバカなんだろうって……」

「そうだな。でも、そこがちーちゃんのいい所だと思うぞ」

何時から居たのか、千早の後ろに立ち、頭を撫でながらプロデューサーは言った。
その隣には、やよいの姿もあった。

「プロデューサーにやよい、なんでこんなトコ居るのよ?」

「いや、迷子になってるちーちゃんを探しにな」

「プロデューサー!その呼び方はやめてくださいとあれほど……」

「え?でも、千早さんとっても嬉しそうですよ?」

「た、高槻さんまで!……もう、知らないです!」

千早はそう言ってそっぽ向いてしまった。だが、自分を探しに来てくれた事、
それが嬉しかった。そんな千早を見て、他の3人は可笑しくて仕方が無かった。

「そういえば、プロデューサーは分かるとして、なんでやよいまで居るの?」

「だって、伊織ちゃんがいきなり居なくなっちゃって。それで、途中で会った
 プロデューサーと一緒に……」

「そうなんだよ。まっ、すぐに見つかってよかったよ。さて、帰るぞ。……ついでに、
 飲み物とかの買出しもしなきゃならないから、付き合ってもらうぞお前ら」

「え?!なんで、そんなめんどくさい事……」

「じゃあ、お菓子買ってやるぞ、伊織。千早とやよいもそれでいいな。ほら、行くぞ!」

そんな言葉を残して、プロデューサーはスタスタ歩いていってしまった。

「あ、あのね~!今時、そんなので誰が喜ぶのよ……」

「わーい!プロデューサー、本当にいいんですか~!」

「別にいいぞ。でも一個だけだからな」

「はーい!伊織ちゃん、千早さん!早く行きましょう~!」

伊織の予想とは違い、やよいは大喜びのようであった。

「……プロデューサー、私もいいんですよね?」

そして、千早も同じく嬉しそうであった。そんな二人を見て、伊織は……

「いるのね、今時こんなので喜ぶのが……はあ」

そう呟いて、プロデューサー達の後を着いて行った。


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しばらくして、4人は繁華街の方を歩いていた。町はカラフルな電飾で飾られており、幻想的でもあった。

「へ~、近くで見ると結構綺麗ね」

「そうだな。……どうした、やよい、千早?」

プロデューサーの後ろで、何やら落ち着かない様子の千早とやよい。

「だ、だって……、いっぱいカップルさんがいるんですよ」

「そうですね……ちょっと、見ているこっちが恥かしい位の人達もいましたし」

確かに周りを見てみると、仲良さげに腕を組んでいたり、ピッタリくっついて
歩いているカップルの姿があちこちで見えた。

「当たり前だろ、クリスマスなんだし」

「そうね……でも、ココに一人寂しい奴がいるわよ、にひひ♪」

そう言われたプロデューサーは、表情を引きつらせながら伊織の方を向いた。

「あのな……ツリーのてっぺんに吊るすぞ」

「あの、プロデューサー。ちょっといいですか?」

急に何かを思い出した千早が、伊織を睨んでいるプロデューサーに話しかけた。

「どうした?」

「はい。前にネオンと星のどっちが好きですかと聞いた事、思えていますか?」

プロデューサーは、前にメールでそんな質問をされた事を思い出した。

「ああ、思い出した。あれが、どうかしたのか」

「はい、プロデューサーが、どっちが好きか聞いてなかったものですから」

「俺か……そうだ、伊織、やよい。お前らはどうだ?」

プロデューサーは、試しに二人にも質問をしてみた。すると、伊織が最初に答えた。

「私はネオンかしら。だって、星は天気に左右されるし、こんな都会だと中々綺麗に
 見えないしね……やよいは?」

「私は、星の方が好きかも。子供の頃、おとぎ話とかで色々聞いたからかな~。
 だって、ちょっと幻想的だし……」

「なるほどね。で、プロデューサーはどうなのよ?」

すると、プロデューサーは少し考えてこう言った。

「う~ん。そうだな、俺はどっちもいいと思うな」

「なによそれー!どっちかって言ったじゃない!」

伊織はプロデューサーの回答には不満があるようだった。だが、千早は
その理由を尋ねてみた。

「どうしてなんですか、プロデューサー」

「ああ。星はさ、自然が作ったすごい物だと思う。前に千早がメールで言ったとおり、
 自然が作った完璧な物なのかもしれない。でもさ、ネオンだって、人間が作った
 すごい物なんだと思う」

「確かにそうですね~……電気で、あんなに綺麗な色を出せるんですから」

「やよいの言うとおりだ。そこに至るまでに、すっごく大変な努力があったと思う。
 それと、元々明かりは人間が生きる為に作ったものだ。だから、ネオンや町の
 明かりって言うのは、完璧じゃないけど、人間が生きてる光なんだと思うぞ。
 生きる為に、必死で作り上げたのが今、俺達の周りにある光なんだよ」

3人はプロデューサーの今の発言に感心していた。

「わ~、プロデューサー、なんかカッコいいです~!」

「まあ、たまにはいい事言うわね~」

「たまには余計だ!……どうだ、千早。納得いかなかったか、今の理由じゃ?」

「いえ……、そうですね、どっちも素敵な光なのは同じなんですね。私は、ネオンの方が
 「作り物」と決め付けていたのかも知れません。プロデューサー、ありがとうございます」

「別にお礼言われる事してないって。ま、お前もまだ子供なんだ、これから色々と知って
 いけばいいさ」

プロデューサーが千早の頭をポンポンと軽く叩きながら言うと、少しだけ不満そうに
しながら言葉を返した。

「はい……でも、私はそんなに子供じゃ」

「そうやって言ってる内は子供だよ。……なんだよ伊織」

「いや……相変らず年寄りじみた発言するわね~」

「うるせえよ……」

ペシッと、伊織のおでこを叩くと、プロデューサーは先に行ってしまった。

「痛いじゃないの!ちょっと待ちなさいよ!」

「あはは。千早さん、行きましょう」

「そうね……」

千早は、プロデューサーに言われた事を心に留め、後を追いかけていった。

それから数分後。4人は夜でもやっている大きなスーパーに来ていた。

「ん~と、適当にジュースとお菓子買っていけばいいか……」

と、本当に適当にジュースとお菓子を選び、カゴに入れていた。
すると、プロデューサーが急に動きを止め、一点を凝視していた。

「プロデューサー、どうかしましたか……あっ」

千早がプロデューサーの目線を追っていくと、そこにはお酒のコーナーがあった。

「……プロデューサー、ダメですよ。今日は車でしたよね」

「分かってる。……ガマンガマンガマン」

呪文のような言葉を連呼しながら、プロデューサーはそのコーナーを後にした。
それを見ていたやよいが、プロデューサーに質問してみた。

「そういえば、プロデューサーってお酒強いんですか?」

「ん?まあ、強い方かな。酔って暴れたりとかは、まったく無いぞ」

「そうなんですか~」

「な~んだ、酔って変な事でもするのかと思ったのに。あんたって、本当に
 つまらないわね」

「伊織……トナカイのソリで轢くぞ。って、あれ!?千早はどこ行った!」

プロデューサーが気が付くと、さっきまで居たはずの千早が居なくなっていた。

「あれ?さっきまで居ましたよ。……伊織ちゃん、分かる?」

「……み、見つけたわよ。というか、見つけちゃった」

やよいとプロデューサーが伊織に指差された方を見てみると、そこには、
お菓子売り場で何かをずーっと見つめている千早の姿があった。何を見ているのか
気になった3人は、こっそり千早に近づいていった。

「……何見てるんだ、千早?」

「えっ!あ、プロデューサー!?……何でもありません、行きましょう」

プロデューサーが、千早が見ていた何かを見つけて、ニヤリと笑った。

「千早、これが欲しいんだろ。そういう事は言えよ、さっき買ってやるって
 言ったじゃないか」

プロデューサーは、千早が見ていた物を手に取って千早に渡してやった。

「い、いえ!別に、そんな!」

「わ~!かわいい犬さんですね~!」

「相変らず犬が好きね、千早って」

動揺している千早が持っているのは、クリスマス限定のぬいぐるみ付きの
お菓子だった。色んな動物の種類があるのだが、犬好きの千早はやはり犬を
選んでいた。

「あ、あの時のは冗談で……」

「その割には、さっきは嬉しそうだったけど?」

「水瀬さん、そんな事は全然!」

「はいはい、気にするなって。そうだ、それは俺からのクリスマスプレゼントだ。
 まさか、受け取らないなんて言わないよな?」

ちょっと意地の悪い言い方ではあったが、こう言わないと受けとらないと思った
プロデューサーは、あえてそんな風に言った。千早も、そう言われて返すのも
失礼だと思い、受け取る事にした。

「……ありがとうございます、プロデューサー」

下を向いたままではあったが、千早はお礼を言った。表情は分からないが、
声の感じから、かなり嬉しそうなのはプロデューサーには分かった。

「別に。それに、お前はもうちょっとわがまま言ってもいいと思うぞ。
 ……いや、仕事に関しては言ってるか」

「うっ……そうなんですか、私」

千早とそんな話をしていると、伊織とやよいが、じっとこちらの方を見ていた。

「ちょっと、私たちには何にも無いわけ~……」

「プロデューサー……」

「あ~……はいはい。お前らにも買ってやるから、そんな顔で見るなよ。
 ……やよいはこれかな?」

と言って、やよいに渡したのは、先ほど千早にあげた物の動物が違う
バージョンだった。

「プロデューサー、これって何ていう動物なんですか?」

「ああ、プレーリードックだよ。ちっちゃくて、可愛らしい所なんかそっくりだぞ」

「そ、そうですか~!じゃあ、これがいいです!これにしまーす!」

喜んでいるやよいとは裏腹に、プロデューサーは「よかった、安く済んで……」
と思っていた。

「やよいってば、あんなのではしゃいじゃって。じゃあ、プロデューサー、私だったら
 どの動物を選んでくれるの?」

プロデューサーは「こいつもこれでいいのか?」と思いながら、動物達の中に手を
伸ばそうとしたその時。

「言っておくけど、その手の先にある凶悪な顔したワニを渡してきたら、本物の
 ワニに会わせてあげるからね♪」

「……はい」

ニッコリと、満面の笑顔で伊織に行動を読まれたプロデューサーは、改めて真面目に
選ぶ事した。そして、その中から選んだのは、いつも伊織が持っているのと同じ
ウサギだった。

「なんか芸が無いわね……理由を聞いてもいい?」

「ん、簡単だよ。さびしいと死んじゃいそうな所とかな」

「だっ!だれがよ!」

と言いつつも、そのウサギを放さない所を見ると、少しは気に入ってくれた様で
あった。

「さて、お前らにだけだと他のみんなもうるさいだろうからな……」

こうして、プロデューサーは結局、全員分のぬいぐるみ付きお菓子を買っていく事に
なった。

その帰り道。千早はプロデューサーに貰ったぬいぐるみが気に入ったようで、
ずっと手に持って眺めていた。

「……そんなに気に入ったのか、それ?」

「あっ……はい。クリスマスに何か貰ったのは、久しぶりでしたから」

ギュッとぬいぐるみを抱きしめながら、千早が言った。

「そういえば、お返しをしないといけませんね。何か。リクエストはありますか?」

「え?別にいらないぜ。気にしなくていいよ……」

「ダメです。私は、プロデューサーに色んなモノを貰っているのに、それじゃあ
 不公平です」

真剣な顔で千早がそう言ったので、プロデューサーも断るわけにはいかなかった。
しかし、何をリクエストすればいいのか、すぐには思いつかなかった。

「千早、変な事リクエストされたらどうするのよ?」

「プロデューサーはそんな事言いません。ですよね、プロデューサー」

実は、「今日一日、ちーちゃんと呼んでも怒らない」にしようと思っていた
プロデューサーは、一瞬、表情を固まらせたが、すぐに平静を取り戻して
次の案を考え始めた。

「……そうだ!千早、何かクリスマスの歌を歌ってくれ」

「歌ですか?でも、何を歌えば……」

プロデューサーの突拍子のないリクエストに、千早も困惑気味だった。
その時、やよいが手を上げて、こう言った。

「はーい!みんなが知っている「あわてんぼうのサンタクロース」なんてどうですか?」

「おっ、いいかも。じゃあ、一曲頼むよ」

「ええっ?ここでですか?」

「じゃあ……さっきの公園でいいか。よし、さっさと行くぞー」

こうして、4人は千早を発見した公園へ戻ってきてしまった。

「まったく、何でまたここに戻ってこなきゃならないのよ……」

「でもでも、折角、千早さんの歌が聴けるんだよ。楽しみ~♪」

「じゃ、俺達はここで聞いてるからな」

プロデューサーと伊織、やよいは公園内の自販機で買った温かい飲み物片手に、
千早の歌を待っていた。千早は3人の前に立たされ、ため息を一つ吐いて覚悟を
決めた。

「では、歌います……」

「あっ、ちょっと待った。千早、楽しそうに歌ってくれよ。上手く歌おうとしなくっていい、
 お前自身が、楽しいと思えるようにだ。もちろん、俺達も楽しませてくれれば、
 尚、いいけどな」

歌おうとする前に、プロデューサーから言われた妙な注文に戸惑いながらも、
千早は歌い始めた。

(……そういえば、あの子はこの歌が好きだった。)

歌いながら、千早は弟の事を思い出していた。昔、弟にせがまれて歌を歌った事。
その後、きまって弟は「もう一回、もう一回歌って、おねいちゃん」と言われて、
何回も歌を歌ってあげた事。でも、それを嫌だと思うことは無く、楽しそうな弟の顔を
見ながら、千早も楽しそうに歌っていた事を。

「……千早さん、楽しそうですね」

「本当ね……あんなに楽しそうに歌を歌ってる千早、初めてかも」

伊織とやよいが驚いているのを他所に、プロデューサーは千早の歌を
いつもの様に聴いていた。

「……やっぱり、千早は歌ってる時が一番楽しそうだな」

プロデューサーがそう呟いた時、やけに後ろが騒がしい様な気がして振り向いてみると、
いつの間にか人だかりが出来ていた。近くを通りかかったカップルや家族連れ等、
みんな、千早の歌を聴いていた。千早はその事に気づかず、とても楽しそうに
歌っていた。

「これでいいですか、プロデューサー……って!」

やっと今の状況が分かった千早は、さすがに一歩後ずさってしまった。
そんな千早に、それまで黙って聞いていたギャラリーは拍手を送っていた。

「よかったぞー!」

「ねえ、もう一回歌ってー!」

「おねーちゃん、歌ってー!」

「歌ってよー!」

鳴り止まない拍手に、どうしていいか分からない千早はプロデューサーの方へ
駆け寄った。

「ど、どうしてこんな事に……」

「いや、気が付いたら人が集まってた……ははは」

「笑い事じゃありません!……私、どうすれば」

「簡単じゃない、もう一回歌えばいいのよ。普段からそんなのやってるじゃない」

「でも、それは仕事としてで……」

「千早さん、みんな待ってるみたいですよ」

やよいの言うとおり、集まった人達はまた千早が歌うのを今か今かと待っていた。

「千早、折角だからもう一曲歌って来い」

「プロデューサー、そんな!」

「でも、さっき歌っててどうだった?楽しかったろ、千早」

プロデューサーにそう言われ、何も言い返せない様子の千早。そんな千早の手を、
伊織が引っ張った。

「はいはい、お客さんを待たせないの。私も一緒に歌ってあげるから、ガマンなさい♪」

「み、水瀬さん!って、高槻さんまで!」

「さっきの千早さん見ていたら、私も歌いたくなっちゃいました!さあ、行きましょー!」

こうして、千早達3人は結局5曲ものクリスマスソングを歌ったのだった。


30分後。千早達のストリートミニライブが終わり、4人は事務所への帰路についていた。

「はあ、プロデューサー、勝手にあんな事してよかったんですか?」

「まあ、いい宣伝になったと思えばいいさ。それにしても、みんな楽しそうに聞いて
 くれてたな」

「そうですね。帰っていくみなさんの顔、み~んな笑顔でしたよ♪」

「まっ、当然よね。このあたしが歌ってあげたんだから」

「おいおい、お前だけの功績じゃないだろ。千早が、最初にあれだけの人を
 引き止めたからだろ」

千早の頭に手を置いて、プロデューサーはそう言った。普段ならすぐに手を
掃われるのだが、今の千早はそれが嬉しそうであった。

「ありがとう。最高のクリスマスプレゼントだったぞ」

「いえ……私もお礼を言いたいんです。私が忘れていた何か、それを思い出せた
 ような気がして……」

「そっか。……あっ、上を見てみろよ」

プロデューサーにそう言われて3人が上を向いてみると、空からちらほらと雪が
降ってきていた。

「わ~!すごいです、プロデューサー!」

「へー、中々綺麗じゃない」

「本当に……綺麗ですね」

しばらくの間、4人とも言葉を忘れてその光景に見とれていた。

「……空からの、いや、空の上の人からプレゼントだな」

プロデューサーが千早にだけ聞こえる声でそう言った。そして、千早にはそれが
誰なのかすぐに分かった。

「そうですね……ありがとう、こんなにも綺麗なプレゼント」

千早は空に向かって、小さくそう言った。そんな時、プロデューサーの携帯が
いきなり鳴り出した。

「誰だよこんな時に。……もしもし……あ~、大丈夫だって。もうすぐ帰るから、
 心配するなよ、それじゃな」

「誰だったんですか、プロデューサー」

「ん?メガネから」

「……それ、律子に聞かれたらひどい目に遭うわよ」

「いつまでも帰ってこないから、心配したんだと。さて、早く帰って、パーティの
 続きするか。行くぞ、千早!」

「千早さん、早く早く~!」

「千早、あんたの居場所はココじゃないでしょ。さっさと戻るわよ♪」

(……私は見つけたかもしれない。私の居場所を、私の事を大切にしてくれるみんな。
 ……それと)

「どうした?置いて行っちまうぞ、ほら!」

プロデューサーが千早の方に手を差し出した。そして、さっき貰ったぬいぐるみを
抱きしめ、千早はハッキリと言った。

「はい……帰りましょう、あの場所へ」

千早はその手を取り、みんなが待つ事務所へと急いだ。その表情には、もう事務所を
出て行った時の哀しみは無かった。

雪が静かに振る中、事務所へと帰る4人の楽しそうな声が町に響いていた……

END
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【 2007/03/06 (Tue) 】 アイマスのSSですよ♪ | TB(0) | CM(1)
ちーちゃーん!!
【 2007/08/31 】 編集
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