春屋

こちらはゲーム「THE IDOLM@STER」「東方project」を応援しているサイトです。管理人のプレイ日記や、SSが置いてあります。
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やよいのキラメキ

こちらは春屋が出来た頃に書いた『アイドルマスター』のSSです。
オリジナルなPが出たりしていますので少しご注意を。

やよいとPが中心のお話です。




「どういう事なんだよ!」

765プロの社長室。そこに響いたのはプロデューサーの声だった。

「プロデューサーさん、落ち着いて……」

「説明しろよ、何でやよいたちのユニットを解散させなきゃいねないんだよ!」

プロデューサーの声にすっかり押されている小鳥をよそに、社長は落ち着いた
様子のままだった。

「まあ、聞きたまえ。君の気持ちも分かる、しかし、これは彼女たちを次の
ステップへ進ませる為に必要な事なんだよ」

「ん……って事は何か考えがあるのかよ」

「うむ、これは事務所を挙げてのプロジェクトなのだがね……」

社長の説明はでは、現在活動しているユニットを一度解散。その後、メンバーを
入れ替えて新たなユニットで活動させようというものであった。

まず、ターゲットを低年齢層中心に狙っていくユニット。
メンバーはやよい、亜美、そして真美。

「おい、普通に真美が居るんだが、これってもしかして……」

「社長が、そろそろ真美ちゃんにも出てもらおうって。いつまでも、亜美ちゃんの
代わりみたいなのもかわいそうですしね」

「そういうわけだ。彼女たちも一人一人の個性が出てきているようだしね」

次に伊織と美希のユニット。これは二人のビジュアルを前面に出し、
中高生を狙っていくユニット。

「あの二人か……うまくやれるのか?」

「ま、まあ、多少不安ではあるが、仲が悪いわけではないのだし、
うまくやってくれるだろうと私は思うのだよ」

「そうですね。美希ちゃんも最近は頑張ってるし、伊織ちゃんもそういう所を
認めてるみたいですし」

次のユニットは、春香、真、雪歩の3人によるストレートなアイドルユニット。

「こっちは、私なりにバランスを考えてみたんだがね。この3人ならば
歌、ダンス、ビジュアルどれを特化させてもいけるだろう」

「なるほど……。それに、この3人だと広い年齢層に受けそうだな」

最後に、千早、あずさ、律子のユニット。

「これはまた、ウチの事務所のボーカルマスターばかりのユニットですね……」

「確かに。こっちのユニットは他のに比べて大人向けって感じがするな」

「うむ、さっき音無くんが言った様にボーカルの強い3人のユニットになる。
そして、君にはこのユニットを見てもらおうと思っている」

「な、何で俺なんだよ」

「この3人の歌唱力を活かせるのは君だけだよ。まあ、よろしく頼むよ」

こうして、一通りの説明を聞かされたプロデューサーはイスに座りため息を
一つ付いた。

「ふう……、で、さっきの話はみんなにしたのか?」

「君より先に来ていた綾乃君にはもうしてあるよ。きっと、天海君達には
もう伝わっていると思う」

「そっか……」

プロデューサーはそう呟くように言うと、少し冷めてしまったお茶を飲んだ。

「だが、やよい君達には君から伝えさせる様に言ってある」

「……そんじゃ、こんな所でお茶飲んでる場合じゃないな」

そう言って、プロデューサーはイスから立ち上がり部屋を出ようとした。
だが、部屋のドアの前でピタッと足を止めてしまった。

「プロデューサーさん、忘れ物ですか?」

「ああ……。さっきは悪かった、それとありがとな……おっさん」

それだけ言い残し、プロデューサーは振り向くことなく部屋を出て行った。

「やれやれ……、素直でない息子を持つと苦労するよ。……なんて言ったら
怒られてしまうかな」

社長がそう尋ねると、その横に立っている小鳥は笑顔で答えた。

「そんな事無いと思いますよ、社長。さて、こっちも忙しくなりそうですね」

それから1時間後。

プロデューサーはやよい、律子、亜美、真美を会議室に呼び出していた。
理由はさっき社長に言われた事を説明する為である。

「えっと、ここに呼んだのは大事な話があるからだ」

「どうしたんですか、プロデューサー。何かいつもよりも元気ないみたいです」

「うん。兄ちゃん、どうしたの?」

「どっか調子悪いの、兄ちゃん?」

顔を覗き込んでくるやよいと亜美、真美を見たプロデューサーは、
さっき社長に言われた事を伝えるのをためらっていた。

(言ったら……こいつら、泣きそうな顔とかするかな。それだけは嫌だな……
特に、こいつのそんな顔は見たくねえな)

そう思いながらプロデューサーはやよいの方を見た。やよいは『?』を
浮かべていた。

(でも、言わないわけにはいかないしな……よし!)

「兄ちゃん、ホントにどうしたの?」

「えっと、ちょっと待っててくれ」

プロデューサーはそう言うと壁の方へ歩いて行き、そして……

ガンッ!!

「はわっ!プロデューサーが思いっきり壁に頭ぶつけてます!」

「兄ちゃんは混乱した……とか?」

「あ~、ステータス異常だね」

「そうじゃないと思うけど……。で、何やってるんですかプロデューサー」

「……ちょっと情けない自分に喝を入れただけだ。それじゃ、話すぞ。実は……」

こうして、プロデューサーは社長から言われた事を伝えた。

「なるほど、社長も考えたわね。私はその案に賛成よ……でも、私はまだ
 アイドル引退させてくれないのね」

「そう言うなよ、律子。それに、お前だってまんざらでもないんだろ?」

「うっ……」

律子は恥かしそうにプロデューサーから目をそらした。

「わーい!真美、よかったね~!やっと亜美たちが双子だってしゃべれるよ!」

「わーい!やっと亜美と同じステージで歌ったりできるー!ありがと、兄ちゃん!」

「いや、礼なら俺じゃなくって社長に言ってくれ。決めたのはあの人だしな」

亜美と真美の二人はプロデューサーの心配をよそに大喜びであった。
今まで入れ替わりでしかステージに出れなかった真美。そして、ずっとそんな
真美と一緒にTVに出たいと亜美も前から言っていたので喜びは大きかった。

(なんだ、心配いらなかったか。……で、残るやよいは)

「うっう~!よかったね、亜美、真美♪よーっし、それじゃあ、お祝いの……」

「あ、了解、やよいっち~!」

「せーの!」

『ハイ!ターーッチ!』

やよいと亜美、真美の三人は大きくハイタッチをして喜びを表していた。

「プロデューサー、もしかして、さっきまで悩んでいたのってやよいたちの事?」

「まあな……。な、なんだよ律子、その顔!」

「いや、相変らず過保護だな~っと思ってね。ほら、やよいに何か言って
 あげないの?」

律子はさっきのお返しとばかりにプロデューサーの背中を押した。

「う、律子の奴め。……えーっと、やよい」

「はい?なんですか、プロデューサー」

「お前、今のユニットやめるのは嫌じゃないのか?」

「え~っと、それはちょっとさみしいです。でも、みんなやプロデューサーと
お別れするわけじゃないですし、平気です!」

やよいはいつもの様に元気いっぱいの笑顔で答えた。それを見て、プロデューサーも
内心ホッとした。

「そっか、そうだよな。よし、それじゃあ、ユニットを解散するにあたって
解散ライブをする事になってる。というわけで、今日からしばらくレッスンが
多くなるけどがんばってくれ。俺からは以上だ」

「はい。それじゃ、頑張るとしますか」

「よーし、がんばるぞ~!って、そのライブに真美って出ていいのかな?」

「うーん、どうだろうね?社長にお願いしたらOKくれるかも。行こ、亜美♪」

そう言って、律子たちは会議室を後にした。

「……ふう」

大きくため息を付きながら、プロデューサーはイスに腰掛けた。

「あの、プロデューサー」

「ん、やよい?まだ残ってたのか」

律子たちと一緒に会議室を出て行ったと思われたやよいがプロデューサーに
話しかけてきた。

「どうかしたのか」

「えっと、プロデューサー。プロデューサーは……その、居なくなったり
 しないですよね」

「そんなわけないだろ。何を心配してるんだよ、お前は」

プロデューサーがいつもの様にやよいの頭を撫でてやると、安心したのか
やよいも笑顔になった。

「えへへ、よかったです♪」

「まったく……。でも、今までみたいに構ってやれる時間は少なくなっちまうかもな」

プロデューサーがそう言うと、さっきまで笑顔だったやよいの表情が曇ってしまった。

「えっ、どうしてですか?うう~……もしかして、私がダメな子だからですか~」

「それはない、どんな心配してるんだよ。いや、俺は律子たちのユニットを
 任されてな、そっちに集中しなきゃならないみたいなんだ」

「そうなんですか。じゃあ、私達は綾乃さんが見てくれるんですか?」

「ああ。綾乃は大変かも知れないが他のみんなを見てもらう事になったみたいだ」

「綾乃さんも大変です~。でも、プロデューサーとお話したりするのが減っちゃうのは、
ちょっとさみしいかも……」

やよいが本当にさみしそうにそう言うと、プロデューサーはまたやよいの頭を
撫でていた。

「そう言うなって。でも、事務所じゃ一緒なんだし心配するな。俺だってちょっとは
 さみしいんだぞ」

「ほ、本当ですか。だったら、ちょっと嬉しいかも。……わかりました、私もガマンします。
でも、時間があったら会いに行ってもいいですよね?」

「それは別にいいんじゃないか、俺もそうするよ。それじゃあ、レッスンとか
 大変かもしれないが、無理しないように頑張れよ」

「はい!それじゃ、プロデューサー……」

やよいがハイタッチの体制でプロデューサーの方を向くと、プロデューサーも
やよいが元気を出してくれる様に力を込めてハイタッチを返した。

「ハイ!ターッチ!いぇい!」

「よし、俺も元気が出た。やよい、お互いにがんばろうな」

「はい!よーし、がんばるぞー!おー!」

元気よく拳を上げているやよいを見ながら、プロデューサーも『俺もやよい達に
負けてられないな』と思っていた。


その日の夜。場所は変わって高槻家……

「はあ……」

弟たちを寝かしつけたやよいは、居間で一人ため息を付いていた。

「あら?まだ起きていたの、やよい」

「あっ、お母さん。うん、ちょっと……」

やよいの母がやよいの隣に座り、頭をポンポンと優しく叩いた。

「まったく、ウチのやよいはえらいわ。こんなに小さいのに家の為に頑張って
 くれるんだもの」

「うう~、小さいは余計だよ~」

「で、どうしたの?なにかあったの」

「えっと……あのね」

やよいは今日、事務所でプロデューサーに言われた事を母親に話した。

「へー、でも、すごいじゃない。やよいがアイドルとして認められてるって
 事でもあるんだし」

「うん、そうなんだけど……」

やよいが元気なさそうに言うと、やよいの母はある事に気が付いた。

「あ~、アレでしょう、プロデューサーさんの事ね」

「えっ!ううん、違うよ!……」

「やよいも女の子だものね。前からプロデューサーさんの事ばっかり話すもの」

「うう~、そ、そうだったけ?」

やよいは覚えていなかったが、家に帰ってから仕事の話をするといつも
プロデューサーの事を話していた。それをやよいの母はしっかりと覚えていた。

「それで、やよいはプロデューサーさんといられる時間が少なくなっちゃうから
 そんな顔してるの?」

「う……そうかも」

やよいがそう言うと、やよいの母はやよいの事をやさしく抱きしめていた。

「わわっ!お母さん、いきなりなに?」

「あのね、やよい。あなたはいつもがんばってるんだから、ちょっとぐらい
 わがまま言ったっていいのよ。プロデューサーさんにも言われた事ない?」

「あっ、あるかも」

「ね、だからガマンしないでいいのよ。そんな事していると、他の人に
 取られちゃうわよ」

やよいの母はやよいを抱きしめたまま、やよいの頭を撫でてあげた。
やよいも嬉しそうに撫でられていた。

「えへへ……、ありがとうお母さん」

「さて、もう寝なさい。明日も早いんでしょう」

「うん、おやすみなさい」

やよいは母親から離れ、おやすみを言うと寝室の方へと戻っていった。

「もうこんな時間だ。早く寝ようっと……でも、その前に♪」

そう言って、やよいは携帯電話を取り出すと、メールを打ち始めた。
相手はもちろんプロデューサーである。

「ピッ、ピッ、ピッっと♪……さーて、本当に寝よ~っと」

メールをプロデューサーに送信し、やよいはようやく布団に入って寝る事にした。

「ふう~……。おやすみなさい、プロデューサー……」


……プロデューサーの自宅。

誰も居ない部屋の電気を点け、車のカギをテーブルに放るとプロデューサーは
そのままベッドに腰掛けた。

「ふう……」

プロデューサーは一息付くとTVの電源を入れた。すると、今日、社長から
言われた事が早くもニュースになっていた。

「……こりゃあ、善永さんの仕業だな。あの人は相変らず仕事早いな」

そう言うと、プロデューサーは冷蔵庫からビールを取り出しテーブルに置いた。

「……はあ。って、なんか俺、ため息多くないか?」

と、言ってみた所で誰も居ない。TVのアナウンサーが、大物女優とお笑い芸人の
電撃結婚のニュースを読み上げているだけだった。

「……これ飲んでさっさと寝よう」

そう思いプロデューサーがビールの缶を空けたその時、携帯からメールの
着信音が鳴り響いていた。

「こんな時間にだれだよ?……って、うわあ、あいつら全員か?」

メールの着信欄には、春香達のメールがびっしりと並んでいた。

「やーれやれ、寝る前に返事だけは返さないとな。……まったく、
 俺の心配なんかいいのに」

みんなのメールの内容は、プロデューサーの事を心配しているもの
ばかりだった。

「たぶん、綾乃の所にもメールが送られてるだろうな。ま、嫌な気はしないな」

プロデューサーが早速メールの返事を書いている時、またメールの
着信が届いた。

「なっ、書いてる途中だって言うのに……ん、やよいか」

やよいからのメールの内容はこうだった。

『プロデューサーへ。 私、いっぱい、いーーっぱいがんばります!
 だから、私の事をしっかり見ていてくださいね!じゃあ、おやすみなさい、
 プロデューサー!』

「……早く寝ろって、あいつは」

そうは言いつつも、プロデューサーからは自然に笑みがこぼれていた。
そして、プロデューサーはやよいへの返事をすぐに返信した。

「これでよしっと。……でも、あとノルマ10人か」


『やよいへ。 さっさと寝ろ。あと、心配しなくてもちゃんと見ててやるからな。
そんじゃ、おやすみ。』


それから、プロデューサーは全員にメールを返し、その日は早めに寝てしまった。


そして、早くも解散ライブまで、あと一週間になった……


「おーし、一旦休憩だ。休める内は休んでおけよお前ら」

「あう~……、兄ちゃん、厳しい過ぎるよ~」

「う~、そうだそうだ~」

「あのね、もうライブまで一週間しかないんだからね。まったくもう……」

文句を言いながらへばっている亜美と真美を律子が叱っている横で、
やよいはまだレッスンを続けていた。

「おい、やよい。もう休んでいいんだぞ」

「あ、プロデューサー。私、まだ平気ですよ?ですから……って、わわっ!」

プロデューサーは休もうとしないやよいを軽々と持ち上げ、そのままレッスン場の
ソファーに半ば無理やり座らせた。

「やーすーめー。こんな所で体壊されてもこっちが困るんだからな」

「あ……、はいっ!わっかりました~!」

「お前らも同じだ。律子、文句ぐらい許してやれよ。亜美と真美もチビッコながら
頑張ってくれてるし」

「はあ、分かりました。本当にプロデューサーは甘いんだから……」

「律子も今ぐらいは休んでおけ。事務仕事とかは俺や小鳥に任せて
おけばいいからな」

「あ、ありがとうございます。そういうプロデューサーは平気なの?」

律子がそう訊ねると、プロデューサーはやよいの隣に座って答えた。

「まあ、何とかな。俺がぶっ倒れるわけにはいかないし、綾乃の方にも同じ事を
言ってある」

「綾乃ねーちゃんも大変だね~」

「そうだ!プロデューサー、肩を叩いてあげます~!」

やよいは立ち上がると、プロデューサーの後ろに回り肩を叩き始めた。

「トントントン♪どうですか、プロデューサー?」

「……あ、ああ。ありがとう、やよい」

と、やよいにお礼を言ったプロデューサーだが。

(うう……、やよい、力弱いな~。でも、気持ちは嬉しいし、このまま黙ってる
 しかないか)

内心そう思いながら、プロデューサーはやよいに肩を叩かれていた。

「あっ、亜美もやってあげる~!」

「じゃあ、真美も~!」

そう言って、亜美と真美はやよいと一緒に肩を叩き始めた。

(ん~、やっと丁度いいくらいだな)

プロデューサーがそう思いながら一息付いていると、様子を眺めていた律子が
一言呟いた。

「……そうやっていると、本当に親子みたいですね」

「はわっ!プロデューサーが急に倒れちゃいました!」

「あ~あ、律っちゃんがあんな事言うから、兄ちゃんがへこんじゃったよ~」

「いや、だって、本当にそう見えたから……つい」

「律っちゃん、その辺にしないと兄ちゃんが立ち直れなくなっちゃうよ?」

その後、プロデューサーのテンションは終始低いままだった……


解散ライブまで、あと3日……


「おつかれさまでしたー!」

「ああ、気を付けて帰れよ」

「気をつけてね~!」

と、プロデューサーと綾乃が事務所を後にする春香を見送っていた。
……のだが、次の瞬間には二人ともソファーへと倒れる様に寄りかかっていた。

「はあ~~~……疲れた」

「俺も……」

ここ数日は解散ライブも近い事もあり、レッスンが多くなったり、それでもなお
他の仕事をこなさなければいけなかった。それに加えてプロデューサーである
二人には事務所でも仕事が残っていた。

「あの、大丈夫ですか?二人ともどっかのゲームのゾンビみたいですけど」

「小鳥か……。まあ、何とかまだ生きてるぞ」

「私も。このくらいじゃまだまだ~……はあ」

そう小鳥に言った二人だが、どう見ても元気には見えなかった。

「えっと、何か持ってきましょうか。栄養ドリンクとか……」

「う~ん、大丈夫。栄養ドリンク、まだ不要って感じで」

「代わりにコーヒーを頼む。人が摂取していいギリギリの濃さで」

「お、お腹壊しちゃいますよ……。わかりました、今淹れてきますね」

そう言い残し、小鳥はコーヒーを淹れに給湯室の方へ行ってしまった。

「それにしてもお前も結構がんばるな、見直したぜ」

「そりゃあどうも。私だって……いつまでも見習いじゃないわよ」

「そうだよな、それじゃあ俺も負けない様……にしないとな」

……

…………

………………

数分後。小鳥がコーヒーを持って二人の所に戻ってきた。

「お待たせしました~……って、二人とも寝ちゃってる」

プロデューサーと綾乃は小鳥が戻ってくる間に眠ってしまっていた。
そんな様子を見て、小鳥は少し笑ってしまった。

「もう、二人とも無理しすぎです。ふふ、風邪引かない様にしてくださいね」

小鳥は近くのテーブルにそっとコーヒーを置くと、その場から離れた。

「おやすみなさい。今はゆっくりしてくださいね、二人とも」


解散ライブまで、あと1日。


「……ついに明日か~」

その日の夜、明日のライブの事を思いながらやよいは色々と思い出していた。

「なんか、プロデューサーと初めて会ったのがず~っと前みたい。
最初に会った時は……ちょっと怖い人かなって思っちゃったんだよね。
全然そんなこと無い人なのに」

「おねえちゃん、ねなくていいの?」

不意にやよいに話しかけてきたのは妹のかすみだった。

「あ、ごめんね。起きちゃったの?」

「ねえ、おねえちゃん。ぷろでゅーさーさんってどんなひと?」

「えっ?えっと、すっごく背が大きくて、優しい人だよ」

ちなみに、すごく背が大きいといってもそれはやよいから見た感想である。
確かにプロデューサーは180近い長身ではあるが、それに対してやよいの身長が
低いのである。

「ふーん。おねえちゃんはそのひとのことだいすきなんだよね」

「うわっ!か、かすみ何言ってるの!」

「だって、おかあさんがいってたよ。おねえちゃんは、そのひとのことが
 だいすきだって」

「お、お母さ~ん……」

やよいはため息をつきながら母親をちょっと恨んだ。

「ふぁ~あ……」

「ほら、もう寝なきゃだめでしょ。お姉ちゃんも一緒に寝てあげるから
 ……くしゅん!」

「う?おねえちゃん、だいじょうぶ?」

「うん、平気だよ。今夜はちょっと寒いからかな?早くお布団に行こう、
 かすみ」

「はーい」

そう言って、やよいとかすみは寝室へと向かった。だが、かすみは
『そんなにさむいかな?』と疑問に思いながらも、やよいと一緒に布団に
入るとそんな事は忘れてすぐに眠ってしまった。


そして、ついに解散ライブ当日。

ライブ開始の数時間前になってその事件は起きた……。


「さて、もう少しでお前らの出番だ。準備はいいか?」

プロデューサーが出番待ちをしているやよい、律子、亜美、真美に聞く。

「ええ、こっちは準備オッケーよ。さーて、がんばりますか」

「よかったね、真美。一緒にステージ出てもいいって言われて♪」

「うん!よーし、おもいっきり楽しんじゃおー!」

律子と亜美、真美は既に準備万端の様だった。しかし、いつもなら一番に
返事をしてくるやよいからの返事は無かった。

「ん?やよい、どうした」

「えっ、なんでもないでーす!……」

やよいはいつもみたいに元気よく返事をした。だが、プロデューサーは
すぐにやよいの様子が変な事に気が付いた。

「やよい、顔が赤くないか?」

「そ、そんな事ないですよ!……ないですよ」

「……亜美、真美、やよいを取り押さえろ」

『りょうかーい!』

プロデューサーの命令を受けて、亜美と真美ががっしりとやよいの
左右の腕にしがみついていた。

「わわっ!ちょっと、亜美、真美~!放して~!」

プロデューサーは動けなくなったやよいの額に手を当てた。その直後、
プロデューサーは少し怒った様な、そして悲しそうな顔をした。

「なあ、やよい。何で言ってくれなかったんだよ。俺はそんなに頼りないのか?」

そう聞くとやよいはブンブンと首を振ってそれを否定した。

「ち、ちがいます!それは絶対にないです!!……でも、どうしても
 言い出せなくって」

「兄ちゃん、外なら涼しいと思うよ」

「うんうん、やよいっち連れて行って来なよ」

「どうしますプロデューサー。幸い、まだちょっと時間はある事だし」

プロデューサーは少し考えた後、律子たちの提案を受け入れる事にした。

「……すぐ戻る。ほら、やよい、おぶってやるからこっち来い」

「あっ……はい」

やよいはプロデューサーの背に乗って、会場の外へ向かう事になった。


その途中……

「なあ、やよい、大丈夫か?」

「はい。えへへ、プロデューサーの背中ってやっぱり大きいですね」

「あのな、また律子に親子とか言われるのはイヤなんだけど……」

「そんなにイヤですか?」

「俺はまだ二十歳だぞ。せめて、兄弟ぐらいにして欲しいぞ」

そんな会話を二人で交わしている間に目的の場所にやっと到着した。
プロデューサーは近くのベンチにやよいを下ろすと、その隣に腰掛けた。

「ふう、風が気持ちいいな」

「はい。プロデューサー……私、重くなかったですか?」

「そんなわけあるか。むしろ、軽すぎるくらいだったぞ」

プロデューサーはやよいの頭を撫でながらそう言った。
それはいつもの事ではあるが、それでもやよいは嬉しそうに
撫でられていた。

「あの、私ってプロデューサーに甘えてばっかりですね……」

「気にするなって。俺もお前に頼られるのは嫌いじゃない。どちらかと言えば、
 遠慮なくそうしてくれる方が俺は嬉しいぞ」

「……プロデューサー。今の私って、どうですか?最初の頃と比べて成長
 してますか?」

そんなやよいの質問にプロデューサーは子供っぽい笑顔で答えた。

「ああ、立派なもんだよ。他のみんなも頑張ってる……それでも、俺にはお前が
 一番だって言える。なんなら、こっから見える海に向かって叫んでもいいぞ」

「わわっ!それはちょっとはずかしいからいいです~!」

やよいは両手をパタパタさせ、本当に海に叫びそうなプロデューサーを止めた。
そんなやよいが可笑しかったのか、プロデューサーはまた笑っていた。

「ははは、冗談だって。……そういえば調子はどうだ?」

「あ……大分楽になったかもです」

やよいが言うとおり、先ほどに比べれば顔色もかなり良くなっていた。

「そっか。やよい、まだ辛いかもしれないけど……笑ってろ」

「えっと、笑顔で病気なんてふっ飛ばしちゃえ!……って、事ですか?」

「そうだ。できるな、やよい」

「はいっ!」

やよいは大きく頷きながらはっきりと言った。その表情はいつもの元気なやよい
そのものだった。

「よし!それじゃ、みんなの所に戻るか。みんなも心配してるだろうし」

「わかりましたー!あの、プロデューサー……」

「なんだ?またおぶってほしいのか。しょうがない奴だな……」

と、プロデューサーがやよいの前でしゃがみ込んだ時、やよいは自分の唇を
プロデューサーの頬に軽く当てていた。

「えっと、いつもいつも、私にい~っぱい元気をくれるプロデューサーに
 お礼です♪じゃあ、先に戻ってまーす!」

やよいはそれだけ言い残すと走ってその場を後にした。
残されたプロデューサーは未だに何が起こったのかわからない様子で、
石の様に固まっていた。

「………………えっ?」

やっと自分が何をされたのかが分かったプロデューサーは、地面に座り込んで
頭を掻いていた。

「……普通、そういうのって俺がするんじゃないのか」

そう呟いて、プロデューサーは空を仰いでいた。

「はあ……。俺、カッコわりぃー……」

それから数分後。

「おお、やっと戻ってきたのかね。みんなはもう準備が終わって舞台袖に
 行ってしまったよ」

戻ってきたプロデューサーを出迎えてくれたのは社長だった。

「ああ、遅くなった……」

「何かあったかね?」

「なんでもない!」

社長の質問を睨みつけながら返すと、プロデューサーはやよいたちの方を
見ていた。

「そうそう、先ほど綾乃君と小鳥君から電話があったよ」

「ん、何か言ってたのか」

「向こうのライブは大成功だったそうだよ。二人とも泣きながら電話を
 してきたものだからびっくりしてしまったよ」

この日は他のメンバーの解散ライブも行われていた。さすがに人手が
足りなかったのもあり、小鳥までプロデューサー代わりに借り出されていた。

「そっか……」

社長とプロデューサーがそんなやりとりをしていると、やよいたちが
プロデューサーに気が付いて手を振っていた。それを見たプロデューサーは、
親指を立てた腕を力強く前に突き出していた。


「おっ、兄ちゃんが何かやってる」

「あれは……全力でやって来いって事でいいのかな?」

「そうだね!よ~し!がんばろう、やよいっち~!」

「うん!それじゃ、亜美、真美、律子さんも!」

『おっけ~!』

「えっ、私もやるの?ちょっと恥ずかしいけど……まあ、いっか!」

やよいたち4人は大きく手を上に挙げ、そして

『ハイ!ターッチ!!』

大きくハイタッチを交わした4人はそのままステージへと駆けていった。
それと同時に、凄まじい声援がステージ裏に居るプロデューサーと社長にも
響いていた。


「なあ、おっさん……」

「ん?なにかね、改まって」

「ありがとうな……あいつ等と出会わせてくれて」

「何を言ってるんだね、まだまだこれからだよ……君もあの子達もね」

社長とプロデューサーはそれだけ言葉を交わすと、ステージが終わるまで
黙ってみんなのステージを見守っていた。



そして……ライブ終了後。

ライブが終わってすぐ、感極まって泣き出してしまったやよいを落ち着かせる為に
プロデューサーはやよいを外へ連れ出していた。

「もう泣き止んでくれたか?」

「は、はい~。ごめんなさい、プロデューサー」

「まあ、いいけどさ。で、体調はどうだ」

「あっ、もう全然平気です♪……へっくし!」

平気と言ったやよいではあったが、既に辺りは暗くなっている時刻の為少し
寒かった。そんなやよいにプロデューサーは自分の上着を掛けてあげた。

「わっ、プロデューサー」

「いいからそれ着てろ。そうそう、さっきのライブすごかったぜ」

「ありがとうございます!それもこれも、ぜーんぶプロデューサーの
 おかげです♪」

やよいはそう言ってプロデューサーの腕にしがみついてきた。
プロデューサーは恥ずかしいそうにしていたものの、黙ってそのままに
させていた。

「……そうだ。やよい、お前は何か欲しいものってないのか?」

「え?いきなりなんですか、プロデューサー」

「いや、お前って本当にそういうわがまま言わないからさ。
 それに、今日は本当に頑張ったんだ。本当になんでも言ってくれ。
 というか、俺がお礼したいんだ」

「うーん、そう言われてもちょっと困っちゃいます。だって、欲しいものは
 プロデューサーのおかげで全部手に入っちゃいましたから」

やよいは「うーん」と言いながら考え込んでしまった。
すると、何か思いついたのか『そうだ!』と言って手をポンと叩いた。

「おっ、何がいいか決まったのか?」

プロデューサーはやよいに訊ねてみたのだが、やよいは恥ずかしそうに
しながら俯いたままだった。

「……まさか、お前まで美希みたいなこと言い出すんじゃないだろうな」

「え?美希さんみたいな事ってどんなのですか?」

「忘れろ、スルーしろ、聞かなかった事にしておけ。……で、決まったのか」

「はい……。えっと、あの~……やっぱりいいです」

やよいはまたしても恥ずかしそうに下を向いてしまった。そんなやよいに
『やれやれ』と言いながら、プロデューサーはやよいの肩に手を置いて言った。

「あのさ、俺には遠慮しなくていいんだって。俺は……お前のおかげで大切な事を
 思い出した気がする、色んな大切なものを手に入れられたと思う。だから、
 気にせず何でも言ってくれ、やよい」

「そ、それじゃあ!……プロデューサーの事……名前で呼んでもいいですか!!」

「……は?そんなのでいいのかよ?」

プロデューサーはちょっと拍子抜けした様だが、やよいは真剣そのものだった。

「だ、だめですか?」

「いや、別に構わないけど。本当にいいのか?」

「はい!いつも、『プロデューサー』って呼んでますから……名前で呼んで
 みたかったんです」

顔を赤くしながらやよいはそう言った。プロデューサーはそんなやよいを見て、
何故か自分まで恥ずかしくなってしまい、何となくやよいから目を逸らしてしまった。

「ま、まあ、それくらいなら全然かまわないぞ、好きに呼んでくれ。……って、
 俺の名前覚えてるのか?」

「えっ?当たり前ですよ。忘れたりなんか、ぜーったいにしません♪」

「そ、そうだよな。いや、事務所に入ってからずっと名前で呼ばれた事が
無かった様な気がしてな……ははは」

「じゃ、じゃあ!呼びます……いいですか!」

「ああ、呼んでくれ、やよい」

やよいはしばらく迷っていたが、意を決して口を開いた。

「……く、黒崎、さん」

「そっちは名前じゃないぞ、やよい」

「き、きずなさん!」

「呼んだか、やよい」

「黒崎、絆さん!!」

「はいよ」

「絆さーん!!!」

「何だよ、やーよーいっ!」

そう言って、プロデューサー……黒崎絆はやよいを軽々と高く持ち上げていた。

「わわわっ!!絆さん、高いです~~!」

「たまにはいいだろ、お前、ちっこいんだし」

「うう~、それはひどいです~!」

ようやくやよいを下ろした絆は、やよいの方を向いてこう言った。

「やよい、これからも色々とあるかもしれないけどさ……よろしくな!」

そして、やよいの方へ手を差し出した。もちろん、それは握手の為の手では
なかった。

「私、まだまだプロデューサーが……絆さんがいないと何も出来ないです。
 だから、私こそよろしくお願いしまーす!それじゃ、せーの!」


『ハイ!ターーッチ!いえい!』


静かな夜に二人の大きな声と、新しいスタートを切る二人の手の音が
響いていた。

「うっう~!絆さん、ずっと……ず~~っと一緒にいてください~!!」

「うわっ!ちょ、いきなり抱きついてくるなって、おい!」

やよいは絆に抱きつきながら思っていた……


     欲しいもの……本当に欲しいものやっと手に入っちゃった♪いえい♪

END……

TO BE NEXT STAGE♪
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