春屋

こちらはゲーム「THE IDOLM@STER」「東方project」を応援しているサイトです。管理人のプレイ日記や、SSが置いてあります。
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やよい、プロデューサー ある日の事件簿

こちらは春屋が出来た頃に書いた『アイドルマスター』のSSです。
オリジナルなPが出たりしていますので少しご注意を。

やよいとPが中心のお話です。




それはある日の765プロで起こった些細な事が始まりだった。
よくある話だが、まさかあんな大事になるなんて、
その時の俺は思ってなかった……

              6月1日 PM 6:32 765プロ事務所(プロデューサー)

その日の俺は綾乃と小鳥と一緒にみんなに届いたファンレターを整理していた。

「しっかし……、多いな~。もう疲れたぞ」

「文句を言わないの。これだって、お仕事なのよ。小鳥さん、彼に頭から
お茶でも掛けてやって」

「あ、あはは……。でも、いっぱい来てますね、コレなんて小さい女の子
からですよ」

小鳥が見せたのは、まだうまく書けないひらがな『「やよいおねえちゃん、
がんばれ』と書いてある手紙だった。俺と綾乃はそれを見てとにかく嬉しかった。

「まっ、自分が貰ったわけじゃないけど嬉しいもんだな」

「そうね……。おっと、噂をすればご本人の登場ね」

綾乃の言うとおり、着替えが終わって更衣室から出てきたやよいが見えた。
その後ろには春香と律子もいた。

「あっ、プロデューサー。何しているんですか?」

「ん、ファンレターのチェックだ」

「でも、何でそんな事をするんですか、プロデューサーさん?」

「まあ、滅多にある事じゃないけど、悪戯とかあるからな。お前らには悪いが
一応な」

「そうそう、やよいちゃん。はい、これどうぞ」

そう言って、小鳥はさっきの手紙をやよいに渡した。

「わ~!……なんか、すッごくうれしいです~♪」

「よかったわね、やよい。……で、私たちのは無いんですか?」

律子がそんな事を言うと、俺と綾乃、小鳥は動きを止めてしまった。

「……なんですか、その無言は」

「い、いや。あるぞ、あるはずだ……、そうだろ綾乃」

「う、うん。えーっと、律子さんのはコレだっけ?」

綾乃が手紙の山から取ったのは、残念ながら春香宛の手紙だった。

「うっ!間違えた~!」

「あはは、いいんですって、気にしてませんし。で、春香のはどんなのが
書いてあるの?」

「わっ、ちょっと私より先に見ないでくださいよ~……えっと」

春香が見た手紙には大きく『はるかっか、萌え!!』と書いてあるだけだった。

「……プロデューサーさん、ライター貸してください」

「うう、春香さん落ち着いてください~」

「い、一応、ファンレターだと思うぞ。……多分な」

俺とやよいが春香をなだめているそんな時だった。

「……いたっ!!」

急に綾乃が声を上げたので俺たちは何事かと思い、綾乃の方を向いた。

「なっ、どうした!」

「わわっ!綾乃さん、手から血が~!」

やよいの言うとおり……と言っても、指先から血が出ているようだった。

「あ、あはは。ごめんね、びっくりさせて。ちょっと紙で切っちゃって……」

「だ、大丈夫ですか?」

「うん、ありがとう、春香ちゃん。平気だから、遅くならない内に帰りなさい」

「……小鳥、律子でもいいから薬箱」

「あ、わかりました」

「了解、ちょっと待っててくださいね」

「やよい、春香。こっちは平気だから、早く帰りな」

「でも~……」

やよいはすごく心配そうな顔で綾乃の方を気にしていた。

「やよいちゃん、私は平気だからさ。春香ちゃん、帰り道途中までお願いね」

「はい、わかりました。綾乃さん、お大事にしてくださいね。ほら行こ、やよい」

「はい……」

心配そうなやよいに綾乃は怪我をしてない方の手を振りながらいつも通りに
『またね~』とか言って見送った。……さて、もういいか。

「あ~……私ってドジだな~……って、うわっ!」

俺は怪我をしている綾乃の手を、半ば強引に引き寄せた。そんな事をしたにも
関わらず、やけに綾乃は冷静だった。

「ん~……。そんな風に強引なのは、美希ちゃんぐらいしか喜ばないと思うけど」

「……ふざけてないで、そっちに隠したのを見せろ」

さっき、綾乃はみんなに気が付かれ無い様に何かを隠したのを俺は見ていた。

「……えっと、何のこと?」

「確かに指先だけだが、この切り傷は紙で切ったにしては深くないか?」

俺と綾乃が沈黙を守ったまま1分ぐらいしていると、そこへ小鳥と律子が薬箱を
持って帰ってきた。

「おまたせしまし……たぁ!?」

「おお~……。小鳥さん、邪魔しちゃ悪いから向こうへ行きましょうか」

む、二人して変な勘違いしてるな。確かに、この状況だしな……。

「お前ら違うって。律子、こいつの手当てしてやってくれ」

いいかげんに綾乃の手を放した俺は、綾乃が何かを隠した方に手を伸ばした。

「あっ、だめ!」

「ん……、これ」

そこにあったのは一通の手紙だった。……だが、なんか違和感があるな。

「……なるほどな」

「え?何かあるんですか、プロデューサーさん?」

小鳥が不思議そうに聞いてきたので、俺がその手紙をひっくり返してやる。

カチャン!と、音を立てて床に落ちたのは……

「きゃっ……、こ、これって!」

「カ、カミソリじゃないですか!綾乃さん、何で黙ってたんですか!」

「あ、あう。そんなに怒らなくても……」

さすがに綾乃がかわいそうなので、俺が助け舟を出してやる事にした。

「まあ、やよい達に心配かけないためだろ。まったく、俺ぐらいには言えよ……」

そう言って、俺は綾乃の頭を軽く叩いた。

「だ、だって……」

「それにしても、今時まだこんな陰険な事をする人がいるのね。まったく、
ゆるせないわ!」

律子の気持ちも分かる。これが俺ならまだいい。だけど、これがやよい達
だったと思うと本気で頭に来る。そう思いながらも、俺はカミソリが入っていた
手紙を細かく見ていた。

「あ、あの?何かわかるんですか、プロデューサーさん……」

「まあな。昔、俺も送りつけられたもんだ……。たまたま、その時売れてた女の
アイドルと一緒にTV出ただけなのに『死ね!』とか、もっとひどい事書かれて
カミソリやら画鋲やら……、ああ、面白かったのは針が大量に来たときだったな。
俺はうそでもついたのかよ!って、思ったぜ」

「そういえば、そんな事もありましたね……」

そっか、小鳥は昔の俺を知ってるんだった。これ以上無駄な話が出ないように
しないと。

「まあ、軽く見ただけで分かった事は……これ送った奴は男かもな」

「ほう、何でそう思ったんですかプロデューサー?」

律子が興味あり気に聞いてきたので、俺の考えを言ってみた。

「まあ、字を見る限りは丸文字で女っぽいんだが……」

俺は手紙を裏返して3人に見せた。

「……なんか、随分筆圧が強い人ね」

「そう、確かに女でも筆圧が強い奴はいるだろうが、これは無理してなれてない
字を書いたからだと思う。それに……」

「何度も書き直した後がある、って言いたいんでしょうプロデューサー?」

「律子の言うとおりだ。この犯人、頭が悪いのかわざわざ下書きしてから
書いてるから、直した後がバレバレなんだよな。……といっても、あくまで
俺の想像だから当たってないかも知れないけどな」

俺がそう言い終わると、綾乃と小鳥がパチパチと拍手をしていた。

「す、すごいわ~……。相変らずね、あなたって」

「律子さんもすごいです。……でも、何の目的でこんな事」

小鳥がそう言ったので、俺は手紙の中身を渡してやった。

「えっと……『あの人に近づくな。あなたはあの人に相応しくない』って、
何ですかこれ?」

「……これも俺の想像なんだが」

「それなら、私でも分かるわよ。これって最初からあなたを狙ったって事よね」

「え?なんでプロデューサーを?その、意味が分からないですって」

確かに、律子の言うとおり俺もそう思う。

「う~ん、まあ、彼ってヘタな男の人よりはカッコいいでしょ。それに、
 いつもみんなと一緒にいるから、逆恨みなのかもね」

律子と小鳥は『あ~』なんて言いながら納得していた。なんだそりゃ、
迷惑な話だ……。だが、その矛先が俺ならまだいいか。

「まあ、とりあえずは送られてくる物はちゃんとチェックして、俺たちで被害を
食い止める事ぐらいしかできないな。ま、その内に飽きるだろ」

「そうね……。ん?それまで、私また怪我するかもしれないの!」

「あ~……、それは俺も同じって事で。まあ、がんばれよ」

俺が肩を叩くと綾乃はがっくりと肩を落とした。

「でも、プロデューサー。大丈夫なんですか、ほっといて」

「まあ、気にはなるが……、2,3日は様子見だ。どうせ、書いてある住所は
ウソだろうし、こっちからは何もできないのが現状だ」

「う~ん、なんか後味悪いわね。犯人を見つけて引っ叩いてやりたいわ」

律子がやたら物騒な事を言っているが俺も同じである。犯人が男だったら
容赦なく殴っている所だ。

「とにかく、この事は俺たちだけで止めておけ。いいな」

綾乃たちは神妙な面持ちで頷いた。だが、俺は内心『どこかのバカが、
くだらない悪戯で反応を楽しんでいるんだろ』なんて考えをしていた。

まあ、この後起きた事件なんて、予想ができるわけ無かったからな。


                 6月3日 PM 3:21 TV局(やよい)

「はふ~、今日もおつかれさまでした~!」

「お疲れ様でした~!」

今日は私と春香さんと美希さんと歌番組の撮影に来ています。
あ~、今日もいっぱい歌えて楽しかったな~♪……あっ、プロデューサーだ。

「おう、お疲れさん。今日はこれで終わりだから、早く着替えて来い」

「は~い♪」

「ハニー、つかれたよ~。つれてって~♪」

わわっ!美希さん、プロデューサーにあんなにくっついてる……。
うう~、ちょっといいな~。

「……ええい!ただでさえ暑くなってきたんだからやめい!暑苦しいぞ!」

「わあ、ハニー冷たいよ~」

「さーて、美希~、早く着替えに行こうか~……」

「あ、あう、春香さん、何か怖いです~」

「お、俺もだ」

私とプロデューサーが怖がってると、春香さんは美希さんの肩をがっしり
掴んで控え室の方へ行っちゃった。

「は、春香、ものすごく怖い顔してるよ~~~!」

「え~?いつもどおりだよ~?」

残った私はプロデューサーの方を向くと。

「……まあ、死にはしないだろ」

なんて、物騒な事を言いました~。

それからちょっと後。私も遅れて控え室の方へ戻ると、春香さんと美希さんが
控え室の前で立ち止まっていました。どうしたのかな?

「春香さん、美希さん。どうしたんですか?」

「あっ、やよい!これ見てよ!」

「そうだよ~!控え室がなんか凄い事になってるの~!」

「え?……わあ~!本当にすごい事になってます~!」

春香さんたちに言われたとおり、私たちの控え室がメチャクチャになっていました。
私たちがびっくりしていると、そこへプロデューサーが走ってやってきました。

「どうした!……な、なんだよこれ」

「えっと、私と美希が部屋に入ろうと思ったんですけど……」

「そうしたら、ドアが開いてたの。変だな~?って、思ったらこれなの」

「……そうか。とりあえず、俺は守衛さんを呼んでくるからな。お前らは絶対に
ここを動くな、いいな」

プロデューサーがすごく真剣な顔してる。こんな時だけど、ちょっとカッコいい
かも……。

「ん?心配するなよ、すぐ戻るからな」

そう言って、プロデューサーは私の頭を撫でた後、またすぐに走って行っちゃい
ました。……えへへ、ちょっとラッキーかも~。

「……プロデューサーさん~、私たちも被害者なのに~」

「うう~、やよいだけずるいよ、ハニー!」

う~ん、それにしても誰がこんな事したんだろ?あっ、私のお財布
だいじょうぶかな~?……そんなに入ってないけど……。

                 6月3日 PM 6:10 事務所(プロデューサー)

「ふむ、それで何も盗られてはいなかったのかね?」

「ああ、部屋を荒らされただけだった……。俺が居ながら面目ない」

俺は社長室で今日あった事を説明していた。俺とやよい達がスタジオに
行っている間に、誰かが控え室を荒らしていったらしい。でも、鍵も
掛かっていた筈なのにどうやって?

「いやいや、君のせいではないよ。しかし、困ったな……」

「でも、本当に誰がやったんでしょうね……。プロデューサーさん、
大丈夫ですか?」

「俺はな……。くっそ、俺に被害があるならまだしも、あいつらに手を
出したんじゃ俺も黙ってられないぞ!」

小鳥が心配してくれたのにも拘らず、苛立っていた俺は思いっきり壁を
蹴っ飛ばしていた。その時……

「ひゃあ!」

と、扉の向こうから声が聞こえた。

「あっ……」

「もう、プロデューサーさんったら。あ、入ってもいいですよ~」

そう小鳥が言うと、やよいと春香、美希が部屋に入ってきた。

「わ、悪い!大丈夫か?」

「は、はい~、ちょっとびっくりしただけです」

「プロデューサーさん、私達は平気ですから。……えっと、綾乃さん達から
お話は聞きました」

ああ、この前の手紙の事か。まあ、こんな状況じゃ話さない訳にもいかないしな。

「えっと、もしかしてハニーが怒られてるのかな~って、心配だったの」

「ありがとうな、お前ら。俺も大丈夫だし、今度はあんな事が無いように
気をつけるからな。そうだ、本当に無くなってる物とかなかったのか?」

「はい、私のお財布も平気でしたよ♪」

やよいはそう言っていつものカエル(だと思う)ポシェットを見せてくれた。
いつも首からぶら下げているだけあって、お気に入りなのだろう。

「ねえ、やよいのお財布っていくら入ってたの?」

うっ、そんな事を聞くなよ美希。答えを聞くとちょっと切なくなる金額しか
入ってないんだぞ。

「み、美希、それは聞かない方がいいと~……」

ほら、春香の反応を見てみろ。知っている人間はあえて避ける事なんだぞ……

「えっと、今日はちょっと多めに入ってるんですよ~……。今日は500円も
入ってます~!」

「……美希、やよいに謝れ」

「えっと、よく分からないけどごめんなの」

確かに普段より入っているが……。そういや、もうこんな時間か。

「お前ら、今日は色々とあったし家まで送ってやるよ。帰る支度してこいよ」

「は~い!わかりました~!」

「じゃあ、向こうで待ってますね、プロデューサーさん」

「早く来てね、ハニー♪」

そう言って3人は部屋を出て行った。

「……にしても、あいつら元気だな」

あんな事があったのにな。俺がそんな事を考えてると、小鳥が俺の方へ
近づいてきた。

「えいっ、小鳥パーンチ!」

ぺしっ、と痛くも何とも無いパンチを小鳥が俺に繰り出してきた。

「えっと、何だよ小鳥?」

「プロデューサーさん、ダメじゃないですか。やよいちゃんたちが今日の事、
気にしてないわけ無いじゃないですか。プロデューサーさんも大変なのを分かって
気を遣ってくれたんだと思いますよ」

言われてみればそうか。うう、俺って相変らずそういうのには気が付き難いんだよな。

「……悪い」

「もう、私に謝っても仕方ないですよ。ほら、元気を出してください」

そんな俺と小鳥の様子を見ていた社長が、こっちを見て笑っていた。

「はっはっは。仲良き事はいい事かな、だね」

「しゃ、社長~!べ、別に私は……そう、一応年上のお姉さんとしてですね~!」

……そういえば、小鳥っていくつなんだ?何気に知らないんだよな。
見た目は俺より子供っぽいのに俺より年上で、あずさや綾乃よりも上……だと思う。

「と、とにかく!プロデューサーさん、大変だとは思いますががんばってください、
いいですね?」

「うむ、気をつけてくれたまえ。私たちも出来る限りの事はするつもりだ」

「わかったよ。それじゃあ、あいつらを送ってくるよ」

俺はそう言って社長室を後にした。……小鳥に年齢を聞こうとしたが、俺もまだ
命が惜しいのでやめておいた。

                 6月3日 PM 7:32 駅前(やよい)

「それじゃあ、ありがとうございますプロデューサーさん」

「ああ。気をつけて帰れよ」

「春香さん、また明日です~♪」

私と春香さんと美希さんは、プロデューサーの車で送ってもらう事になりました。
一番最初に美希さんの家、次に春香さんがいつも通っている駅、私の家って順に
なりました。

「またね、やよい~!プロデューサーさんも運転頑張ってくださいね~!」

そう言って、私たちに手を振りながら春香さんは行っちゃいました。

「おーい、転ぶなよ……って、手遅れだったか」

あっ、ホントだ。春香さん転んでます……痛そう~。

「ま、いつもの事だし平気か。さて、最後にお前の家か」

「はい、おねがいしま~す♪」

……

…………

うーん、運転してる時のプロデューサー、カッコいい~。

「ん?俺の顔、なんかついてるのか?」

「い、いえ!なんでもないです!えへへ~……」

えっと、えっと。何かお話しなくちゃ……

「そういえば、プロデューサーが家に来るの久しぶりですね~」

美希さんが来るちょっとだけ前。私が家で一人で留守番をする事になった時に、
プロデューサーがずっと一緒に居てくれたんだっけ……。わわ、今思い出すと
恥かしいかも~!

「そうだったな、あの時は……。あ~、律子たちにひどい目に遭わされたっけな」

はう、プロデューサー笑ってるけど笑ってない……。あの時の夜、私が寝ぼけて
プロデューサーの横で寝ちゃってたら次の日の朝に大変な事になってたんだっけ。

「え、えっと、私がプロデューサーの家に行った事もありましたね」

「ああ、前に俺が風邪引いて倒れてた時か。あの時はありがとうな」

そうそう、あの時はびっくりしたっけ。私と律子さんたちでお見舞いに行って、
私が心配になって戻ったらプロデューサーが倒れてたんだよね。あの時は本当に
心配したな~……。

「いいえ、私こそいっぱいお世話になってますから。気にしないでください」

「そっか。じゃ、また風邪引いたら頼もうかな」

「はーい。プロデューサーも、私が風邪引いて寝込んでいたらお願いしますね♪」

「む……、わかった。余計な事言ったかな」

あはは、プロデューサーちょっと困っちゃった。あ、そんな事言っている間に
もう家に着いちゃった。もっとお話してたかったな。

「そんじゃ、お疲れ様。ゆっくり休めよ」

「はい、プロデューサーもお疲れ様です」

私がおっきく手を振って家に入ろうとすると、プロデューサーに呼び止められました。
あれ?忘れ物したかな。

「どうしたんですか?」

「いや……なんだ、今日みたいな事もあるし、何かあったら俺を呼べよな。
すぐに助けに来てやるから」

「はい!プロデューサー、正義のヒーローみたいです~!」

「ははは、そうだな。じゃ、また明日な」

そう言って、今度こそプロデューサーは行っちゃいました。……えへへ、私だけの
ヒーローだったらいいのにな~。

「あっ!おねえちゃん、おかえり~!」

「ただいま。みんな、今日もいい子にしてた?」


              6月4日 9:00 765プロ事務所(プロデューサー)

ふう……、今日も休みなしで仕事か。とは言っても、ここ最近は色々とあったし、
そうも言ってられないか。そんな事を考えながら事務所の入り口のドアを開けると、
いきなり律子と小鳥がこっちへ突撃してきた。

「プロデューサーさん!遅いですよー!」

「そうですよ!これを見てください!」

「……あのな、いきなり本を顔に押し付けられても分からないって」

はあ、朝からこれかよ。まったく、いつか過労で倒れるな俺。

「ああ、ごめんなさいプロデューサーさん!でも、これ……」

そう言って小鳥が俺に見せたのは……週刊誌か?俺はあんまり読まないからな
……って!

「なっ、なんで昨日の事がもう記事になってるんだよ!」

「わ、私に怒鳴ったって知りませんよ!……まあ、犯人はあの人でしょうけど」

律子が言ったあの人って……あ?、あの赤い奴、悪徳か。

「あのシャ○専用機め、余計な事を~!どっかに沈めるぞ!」

「そうですね、逆さ吊りにでもしてやりたいですね。ふっふっふ……」

「ふ、二人とも怖いですよ……」

俺と律子があの赤い奴をどうしてやろうかと考えていると、会議室の方から
真と伊織ともう一人出てきた。

「おう、真に伊織。ん、善永さんも来てたのか」

「ええ、今日はこっちの二人に取材をね。そういえば、大変な事になってる
みたいね」

さすが敏腕記者。その辺の事はもう知ってるのか。

「まあな……」

「でも、本当に許せないですねプロデューサー。ボクたちで何かできる事は
無いですか?」

「ありがとう、真。でも、お前らを危ない目に遭わす訳にはいかないからな」

そうは言ったが、未だに手がかりも何もないんだよな。警察にも来てもらって
調べてもらったのに……

「ちょっと、そんな気休めいらないわよ。あんた一人で無理ないでよね」

「ん、ありがとうな伊織」

「べっ、別にお礼言われるような事言ってないわよ!その、あんたがそんなん
だと仕事に支障が……」

「ははは、伊織ってば。でも、本当に大丈夫ですかプロデューサー。ちょっと
疲れてるようにも見えるんですけど」

うーん、真の言う通りかも知れない。それに、最近は暑いからな。
でも、今は……

「お前らが心配してくれるのはありがたい。でもな、俺はイヤなんだよ。
俺は自分が怪我しようがなんて気にしない、でも本当にお前らがそんな目に
遭うのは絶対にいやなんだよ」

「プロデューサーさん……」

「ふう、相変らず恥かしいセリフをはっきり言う人ね。でも、一つだけ言わせて。
プロデューサーがそう思ってるように、私たちもプロデューサーの事心配してる
って事。いい、忘れちゃだめですよ」

ビシッと律子に指を指されてそう言われた俺はちょっとだけ自分が情けなくなった。
結局、俺もみんなに守ってもらってるんだな、と。

「……悪い、そんでもってありがとう律子。まあ、本当に困ったら助けてもらうぜ。
 だから、お前らもそうしろ、いいな」

「わかってますって。まあ、盾ぐらいにはなるでしょうしね」

そ、それはひどくないか律子さんよ。折角、いい事言ってたのに……。

「ねえ、プロデューサー。こっちの方はどうするの?」

伊織はさっき俺が見せられた雑誌を片手にそう言ってきた。

「そうだな……、しばらくは放って置く」

「な、なんでですか?今だって結構ひどい事書かれてるのに!」

真が怒るのは分かる。実際、ある事無い事も書かれて俺も腹が立って
いるんだが……。

「それでもだ。それより、どうやって身を守るかが重要だ」

「そうね、私も何か分かったら知らせるわね」

善永さんはそう言って事務所を後にした。さて、俺も仕事だな……。

「どれ、頑張るとしますか」

と、気合を入れて自分のデスクに座った瞬間、俺の携帯がいきなり鳴り始めた。

「な、なんだよ忙しいな……。もしもし……」


「さーて、私たちも仕事ね。ほら、伊織、真、行くわよ」

「はあ~、さっき取材が終わったばかりなのに……」

「あはは、文句言わない。……あれ、プロデューサー?」

「……うーん。みんな、落ち着いて聞いてくれよ」

「どうしたんですか、プロデューサーさん?」

小鳥や律子たちの視線が俺に集中する中、俺はゆっくりとさっきの電話で
言われた事を言った。

「なんか、犯人が捕まったって……」

しばらくの沈黙、そして……

『えーー!!』

まあ、そうなるわな。しかし、あっけなさ過ぎるよな……なんか引っかかる様な
気もする。

「まあ、これで終わってくれれば楽なんだけどな……」

そう嘆いて、でっかいため息を一つ吐いた。

            6月7日 12:12 TV局(やよい)

「ねえ、やよい。この前の犯人って、もう捕まったんだよね?」

「はい!プロデューサーがそう言ってましたよ、よかったです~♪」

私と美希さん、春香さんは丁度この前の事件があったTV局でお仕事中です。
でも、この前の犯人さんはもう捕まったし、安心安心です♪

「でも、なんで今日はプロデューサーさんいないのかな?」

「そうなの~……。せっかく、ごほうびにあーんなコトとかこーんなコトして
あげようと思ったのに~」

「美希~……ちょ~っと後で話があるんだけど」

はわっ!ま、また春香さんがすごい怖い顔に……。でも、本当に何でプロデューサー
来なかったんだろう?

「はいはい、おしゃべりはその辺にしなさい。まだ撮影残ってるわよ」

「律子さんの言う通りよ、ほら、戻った戻った」

「はーい。あの、綾乃さん」

「ん?何、やよいちゃん」

「どうして今日はプロデューサー来なかったんですか?」

「んーっと……、なんかね、また警察の方に行ったみたいなのよ。理由は教えて
くれなかったけどね」

そうなんだ……、でも、何でだろう?まさか、本当に犯人さんを殴りに
行っちゃったんじゃ?!

「やよいちゃん、プロデューサーさんは犯人に復讐しに行ったりはしてないと
 思うけど」

「わっ!なんで分かったんですか、小鳥さん!」

びっくりした~。私が考えてた事、当てられちゃった……。あれ、そういえば
小鳥さん、今日はどうしてついて来たのかな?

「あ、律子さん、綾乃さん。ちょっといいですか?」

「どうしたの小鳥さん。何か急用でも?」

「じゃあ、ちょっと私達は席を外すわね。春香、あんたが一番お姉さんなんだから、
しっかりしなさいよ!」

律子さんは春香さんにそう言って小鳥さんと綾乃さんの所へ行っちゃった。

「う~、律子さん、もうちょっと私を信頼してくださいてば~」

「……あふぅ、疲れてきちゃったねやよい」

「そうですか?私はまだ元気ですよ~!」

私たちがそんな話をしていると、向こうからスタッフさんが走って来ました。
どうかしたのかな?

「すいませーん!こちらの撮影機材にトラブルが起きまして、少し撮影まで
時間が掛かりそうですなんです」

「わー、それは大変ですね……。それで、それまで私達はどうすればいいん
ですか?」

「ええ、申し訳ないんですが一旦休憩と言うことで……。本当にごめんなさい」

スタッフのお姉さんが何度も頭を下げながらそう言ってくれました。そんなに
謝らなくてもいいのにな。お姉さんが悪いわけじゃないのに。

「……だって、丁度よかったの♪ほら、いこ、やよい」

「あっ、でも、綾乃さんとかにも知らせないと……」

「ご心配なく、さっき私が知らせておきましたから」

「それなら平気かな。それに、まだ綾乃さんたちお話中みたいだし」

春香さんが言ったとおり、まだ綾乃さんと律子さんと小鳥さんでお話してる
みたい……

「さあ、こちらですよ」

結局、私たち3人はお姉さんについていく事になりました。

「……ん~」

「どうしたのやよい、具合悪い?」

「あ、違います春香さん。なんか、へんな寒気がした様な~?」

「わわっ、やめてよ、やよい~。私、そういうの苦手なんだから~」

「ふーん、美希は平気だよ。ほら、早く行こうよ~」

うーん、私の気のせいだったのかな?……。はあ、こんな時にプロデューサーが
居てくれたらな~。

                6月7日 12:13 警察署(プロデューサー)

「……ったく、やっぱりめんどくさい事になったな」

警察署から出てきた俺は愚痴もほどほどに車へ急いでいた。
そのついでにやよい達の所へついて行かせた小鳥に電話をかけた。

「小鳥か?急いで律子たちに伝えて欲しい事があるんだ……」

俺は用件を手短に伝えて早々に携帯を切った。

「ここからTV局まで……めちゃくちゃ急いで15分ちょっとか」

携帯を助手席に乱暴に投げ込んで、俺は車のエンジンを掛けた。

「法定速度ギリギリまで飛ばすか。……間に合えよ!」

                6月7日 12:25 TV局(やよい)

私たち3人はスタッフのお姉さんに連れられて、控え室……っぽい部屋に来ました。
なんだろう、さっきからお姉さんの様子が変な気がするんだけど?

「なんか何にも無い部屋だね~」

美希さんが部屋をぐるっと見回してそう言いました。春香さんも不思議そうに
部屋を見てます。

「本当にここでいいんですか?」

「ええ……。やよいちゃん、ちょっと聞いてもいい?」

「はい?なんですか」

「プロデューサーさんって、どんな人?」

「えっ?綾乃さんですか。うーんと、しょっちゅう抱きついてきたりするのが
困りモノですけど、いい人ですよ♪」

「えーっと、そっちの方じゃなくってもう一人の」

もう一人……、あっ!

「あ、今日は来てないプロデューサーですね。え?と、すっごく頼りになるし、
何でも出来るし、それにすっごく優しいんですよ!」

「へー、そうなんだ」

あれ?なんか、お姉さんの目がちょっと怖い様な……。そんな事を私が考えていると、
突然入り口のドアが開いて律子さんたちが入ってきました。

「春香っ!美希っ!」

「やよいちゃん!大丈夫なの!」

「えっ?えっ?えっ?」

何が起きたのか私には分からないけど、律子さんと綾乃さんが私の前に立って
お姉さんの方をにらんでます……。ど、どうしたのかな?

「はあ、はあ……。二人とも、待ってくださいよ~」

あ、遅れて小鳥さんも来ました。

「さーてと……勝手にやよいたちを連れてった理由を聞かせてもらいましょうか?」

「えっ?勝手にってどういう事ですか」

「そうだよ。美希達、その人に言われてここに……」

「そもそも、それがウソだったの。私たちも焦ったわよ、気が付いたら春香ちゃん
 たちいなくなってるんだもの」

そ、そうだったんだ……。でも、何の為にそんなウソを?お姉さんの方は未だに
黙ったままです。

「実はさっき、プロデューサーさんから電話があったんです。そこでこう
 言ってました」


『捕まった奴が全部喋った。共犯……と言うよりは真犯人がいた。
 今回捕まった奴はそいつに言われて手紙を書いただけだったんだ。
 真犯人は……今お前たちがいるTV局のスタッフだ!しかも、俺の予想と
 外れて女だ!』


「……それで、やよいちゃん達から目を放すなって言われたんですけど」

「まあ、ちょっと遅かったわけね。でも、間に合ったからいいわ……で、
何でこんな事してくれたのかな?さすがの私も本気で怒ってるんだけど」

わわっ、綾乃さんがいつもは見せないような顔で怒ってる。
……プロデューサーとは違った感じで綾乃さんもカッコいいかも。

「でもでも、何でこんな事したんですか?お姉さん……」

「…………………………っさい」

あれ、お姉さんが何か言ったみたいなんだけど、よく聞き取れなかった。

「…………あー!!うるさいうるさい!!うるさいって言ってるのよ!!」

「わっ!!」

「なっ……」

「あら、逆切れするとは思わなかったけど。でも、やよいちゃんに当たらないで
欲しいな」

「あ、綾乃さんすごい……」

「うんうん!あの人、すっごい怖い顔してるのに一歩も引いてないの!」

美希さんの言うとおり、綾乃さん全然引き下がってないです!
本当にカッコいいです?!

「あ、綾乃さん、よく平気ですね……」

「ふ、ふふふ……。私だって怖いけど、ここは彼がお巡りさん連れて来るまで
頑張らないとね。私だって、みんなを守れるわよ」

「綾乃さん……」

「さて、もう一回聞くわよ。何でこんなくだらない事したの」

「くだらない……くだらないのはそっちの方よ!!」

わわっ!さっきまであんなに優しかったお姉さんが別人みたいになってますー!

「ど、どういう事なの?」

「くだらないのはそっちだって言ってるの!わからないの、あの人の才能は
こんなものじゃないのに……。それなのに、あんな子供たちと遊んでるみたいに!!」

「えっ?あの人って……」

「そうよ、あなた達がプロデューサープロデューサーって呼んでるあの人よ!
あの人が昔どれだけ凄かったか知ってる!知らないでしょうけど、あなた達
なんか及ばないほどだったのよ!分かる!」

「う、うわ~……、めんどくさいタイプだこりゃ」

「た、確かに。でもあなた、もうプロデューサーは歌うの辞めちゃってるのよ。
あなたのやってる事はただの逆恨みよ。悪い事言わないから自首しなさい」

そうだったんだ……。お姉さんはプロデューサーがまだ歌ってた頃のファンの人
だったんだ。たしかに、私はプロデューサーほどうまくはないな~……。

「まあ、そういう事。律子さんの言ったとおり、その方がいいわよ。正直、
みんなの事を大した事無いみたいに言われたのはムカツクけど、彼も昔の自分の
ファンがこんな事したなんて知ったら悲しむだろうし」

と、綾乃さんがそう言った時、なんかお姉さんの方から『チキチキッ』って
虫の鳴き声みたいな音が……。

「ちょっ!」

「あーら……、これまたでっかいカッターだこと。まだそんなの売ってるんだ」

「あ、綾乃さん!落ち着いてる場合じゃ~!」

「動かないで小鳥さん!春香ちゃんと美希ちゃんをおねがい!……で、律子さんは
スキを見てやよいちゃん連れて脱出ね」

「綾乃さんはどうするんですか!」

「そ、そうですよ~!」

「うーん、何とかなるでしょ。それとも律子さん、何か護身術の心得でも?」

「うっ……ないですけど。綾乃さんこそあるんですか?」

……あれ?綾乃さんが無言だ。

「あの、小鳥さんは何かできたりしますか?」

「ゲ、ゲームなら浮かした相手を地上に降ろす事なく瞬殺できるけど……。
ごめん、春香ちゃん」

「現実じゃ役に立たないの~」

小鳥さんたちが喋ってる間に綾乃さんがポケットに手を入れて何かしてる。
何してるのかな……。

「そこっ!うるさいってさっきから……」

「今だっ!それっ!」

わっ!綾乃さんがポケットから小銭とか飴玉とか鍵を思いっきりお姉さんに
投げつけました!

「そんなのだって結構痛いでしょ!みんな、今の内に早く!」

「やよい!早くこっちへ!」

「はい!律子さ……きゃあ!」

いった~……転んじゃいました。って、そんな事言ってる場合じゃなかったんだー!

「いっ、ふざけた事してくれたわね!」

わーー!お姉さんがこっちにくるーー!!えっとー、ええっとーーー!!


「た……助けてプロデューサーーー!!!」


……

…………

………………

(……あれ?どうしたのかな、すっごく静かになったような?)

私がそーっと目を開けてみると、私の目の前に見覚えのあるおっきな後姿が……

「プ、プロデューサー!!」

「よう!言ったろ、呼んだら助けに来てやるって!」

え?……あっ!そういえばこの前。

         『何かあったら俺を呼べよな。すぐに助けに来てやるから』

「ほ、本当に来てくれたんですか~!」

私がびっくりしていると、プロデューサーはいつもみたいに笑ってくれました。
本当に約束守ってくれるなんて、思っても見なかったです?!!

                 6月7日 12:53 TV局(プロデューサー)

「プ、プロデューサー!!」

よし、元気そうなやよいを確認っと!

「よう!言ったろ、呼んだら助けに来てやるって!」

「……ほ、本当に来てくれたんですか~!」

まあ、約束だったからな。俺は返事の変わりに笑って見せてやった。さてと、
かなりやばかったが間に合ったからよかった……。警察が来るまでもうちょっと
掛かるか。

「やよい、ちょっとあぶないから下がってろ」

「あっ、はい!」

……よし、やよいは律子たちの方へ行ったか。それじゃあ、あとはこっちか……。

「よくもあいつらにひどい事してくれたな……、どういうつもりなんだよ!答えろ!」

既にMAX振り切って頭に来ていた俺は、女が持っているカッターの刃を掴んでる
手に力を込めて叫んでいた。


「プ、プロデューサーさんがあんな風に怒ったの、初めて見ました……」

「わ、私も……」

「小鳥さんと律子さんが知らないって事は、私が分かるわけないか」


俺は何も言わない犯人に苛立ちながら、さっきと変わらない体制でいた。

「何とか言ったらどうなんだよ!言っておくが、お前が喋るまで俺はずっと
このままでいるつもりだからな!」

「あ、わ、私は……」


「プロデューサーさん、ちょっと怖いかも……」

「ミ、ミキも。絶対に本気で怒らせないようにするの……やよい?」

「はあ~……かっこいいです~……」


「だ、だって……あなたが、あなたが!」

「ああ?俺がなんなんだよ!」

俺は女が持ってる刃物を押さえたまま問い詰めた。

「あなたが……あんな子たちの子守してる姿なんて見たくなかったのよ!
だってそうでしょう、昔のあなたはすごい歌を歌ってて……私、本当に大好き
だったのに!」

「……だから何だよ」

「だ、だから、私許せなかった!そんなあなたの才能を潰しちゃう様な
あの子達が!!」

そう言って、女はやよいたちの方をキッと睨んだ。……あー、もう限界だ。

「おい、言いたい事はもう無いな」

「えっ?」

「お前、女で本当によかったな」

俺はそう言ったのと同時に腹部に拳を入れた。一応、手加減はしてだ。

「あっ!……う」

崩れ落ちた女を押さえて、俺はそいつが持っていたでかいカッターを
床へ投げた。

「女じゃなかったら、確実に顔をぶん殴ってたからな……。あ~!女を殴る
 なんざ気分悪い事したぜ、まったく!」

とりあえず、気を失っている女を床に寝かして、俺は愚痴をこぼしていた。
本当に腹が立つし、気分が悪い終わりだった、まったく。

「プロデューサー!!」

「あ?やよいか。もう平気だぞ、もうすぐお巡りさんも来るだろうし。
 お前は怪我しなかったか?」

「はい!私は平気でーす!だって、プロデューサーが助けてくれましたから!」

ふう、どうやら本当に元気そうだな。やよいの後から律子たちも俺のところへ来た。

「プロデューサーさん!かっこよかったですよ~!あ、助けに来てくれて
ありがとうございます!」

「そうなの!さっすがハニーだね~!ますます好きになっちゃうの♪」

「ははは、そうかよ……。そうだ、綾乃、律子に小鳥。俺がいない間ありがとうな」

「まったく、こっちは寿命が縮むかと思いましたよ……、でも助かりましたよ」

「プ、プロデューサーさん、私、何の役にも立てませんでした~」

小鳥の奴は涙目で俺に頭を下げていた。まあ、実を言うと俺も戦力として
考えてなかったんだよな。まあ……いないよりはまし。

「そうそう、プロデューサーが来るまで綾乃さんががんばったんですよ」

「そうなのか、やよい?」

「はい、プロデューサーと同じくらいカッコよかったですよ!
 ……あれ、綾乃さん?」

そういえば、さっきから喋ってないような。そう思っていると、律子たちの
後ろで綾乃が床にへたり込んでいた。

「わっ、どうしたの綾乃さん?」

「あ、あははは……。だ、大丈夫よ美希ちゃん、ちょ?っと今頃になって怖く
なってきちゃっただけだから」

「綾乃も悪いな。もうちょっと早く俺が来てれば良かったんだけどな」

「いいわよ。それに、私だってもう一人前のプロデューサーなんだから」

と言っても、床に座り込んでいる状況では説得力が無いな。
でも、よくやったと思う。

「そうそう、あの赤い奴、役に立ったぜ」

「えっ?赤い奴って……あの人が?」

律子が不思議そうに首をかしげている。いや、律子以外も同じみたいだ。

「あいつが勝手に色々と調べてくれたおかげで、今回の事件に真犯人が居るって
分かったんだよ。まあ、泳がせといて正解だったな」

「ま、まさか、そこまで考えててあの時『放って置け』なんて言ったの?」

色々と驚いてる律子に笑いながら頷いてやった。
それにしても、流石に疲れた……。

「そうだ、やよい。事件も解決した事だし、ほれ、いつもの」

そう言って、俺は右手をあげてやよいの方へ向けた。

「あっ、はい!じゃあ、ハイ!ター……」

ん?どうしたんだ。やよいの動きが止まった……というより、他のみんなの動きも
止まってる様な。そんな事考えていると、みんな一斉に……

『わっーーーー!!!』

と、俺の方指差して叫んでいた。な、何事だ?

「どうしたんだよ、お前ら?」

「プ、ププ、プロデューサーさん!!」

「手ー!手なの?!」

「手がなんなんだよ?」

「あー!もう、どうして気が付かないんですかあんたは!手を見なさいって
言うのよ!!」

律子に怒られた俺は言われたとおりに右手を見て見ると、なんかダクダクと
流れていた。

「あー……、血だな」

そっか、忘れてたけどさっき俺はカッターの刃を押さえてたんだった。
ここに駆けつけた時にとっさだったんで刃の方を持っちまったんだな。

「そんなに騒ぐなって。このくらいの怪我なんて昔はよく……」

「……昔は何ですか」

「えっと……、ちょっとやよいたちの前では話せないかな」

まあ、昔の俺はちょっとやんちゃしてたからな……。律子や綾乃たちなら
まだしも、他の奴らには絶対に言えない。

「そんな事より、プロデューサー、早く手当てしないと~!」

「そうだな。薬箱持ってきてくれよ、それで何とかなるし」

俺がそう言うと小鳥が包帯と傷薬を差し出してくれた。

「なんで持ってるんだ?」

「備えあればってやつですよ。あ、私がやりましょうか?」

「いいよ、このくらい自分で……」

「わたしがやります!」

やよいが小鳥から包帯と薬を半ば強引に受け取ってそう言ってきた。

「い、いや、自分で出来るってやよい」

「わたしがやります~!!」

……う、そんな目で見るな、断れないだろうが。

「……おねがいします」

「はい!まかせてくださーい!」

うーん、まあ平気……だよな?結局、傷の手当てはやよいに任せる事にした。
はあ、本当に色々と疲れた……。

                   6月7日 TV局 13:45

「はい、終わりました♪」

「ありがとうな、やよい。しかし、慣れてたな」

包帯を巻かれた手を見ながら、プロデューサーは感心していた。

「はい、弟とかよく遊んでて怪我したりするんで」

「そっか、えらいなお前は」

プロデューサーが頭を撫でてやると、やよいは嬉しそうに目を細めていた。
そこへ、やって来た警官にこれまでの経緯を話しに行っていた律子が
プロデューサー達の方へ来た。

「プロデューサー、ちょっといい?お巡りさんが話を聞きたいって」

「わかった。じゃあ、ちょっと行ってくる……どうかしたのか?」

「あの……、お姉さんはどうなっちゃうんですか?」

「そりゃあ……あれだけの事したわけだし、それなりの罪はあるわね」

律子がそう説明すると、やよいは表情を曇らせた。

「プロデューサー、あの人、本当はあんな悪い事する人じゃないと思うんです。
 だから……」

「だから許してやれってか……。正直、俺はそんな気はまったく無い。
理由が理由だけになおさらな」

プロデューサーは今回の事件の原因が自分にあるのが許せなかった。
そのせいか、犯人の事も許せない気持ちでいっぱいだった。

「でもでも……」

「プロデューサーさん、私からもおねがいします!」

いつの間にかこちらに来ていた春香がプロデューサーにそう言った。

「ミキもおねがいなの。たしかに怖い目にあったけど、あの人、ハニーの
 ファンの人だったんだよね」

「だけどよ、今になっては関係ない……」

「でも、ハニーいつも言ってるよね、ファンの人達は大切にしなさいって。
 どんなに時間が経っても、ファンの人はファンの人だと思うの」

美希にそう言われると、プロデューサーは言葉に詰まってしまった。

「でもよ、俺が判断していいわけじゃないだろ」

「それなら平気よ。ねっ、小鳥さん」

「はい、社長からの伝言ですよ。プロデューサーさんの判断に任せる、
 との事です」

綾乃と小鳥にトドメとも思える事を言われ、プロデューサーは頭を掻いていた。

「おまえらな~……。まったく、言っておくけど俺が何を言っても最後に
 判断するのは向こうだからな」

それだけ言って、プロデューサーは背中を向けて行ってしまった。


「えっと、あなたがあの子達の保護者さん?」

「ん……保護者か。まあ、間違ってはいないか」

「お話はさっき女性の方から聞きましたが……おや、その手はどうなされました?」

警官がプロデューサーの右手を見て質問してきた。

「ああ、これは……自分でやったんだよ。床に落ちてたカッター拾おうとして、
刃の部分を掴んじまったんだ」

「はあ……。でも、犯人が何か持っていたとも聞きましたが」

「自分でやったんだ……、何か文句でもあるのか?」

「あ、いえ……。では、今回の事はあの女性があの子たちを勝手に連れ出した
 という事ですか?」

「そんな所だ。一応、俺の上司にも聞いておいてくれ」

プロデューサーは事務所の電話番号を警官に教えると、やよいたちの所へ
戻ってきた。

「あ、おかえりなさいプロデューサー」

「……あとは警察しだいだからな、俺はしらないぞ」

そう言って、やよいの頭をポンと軽く叩いて部屋を出て行ってしまった。

「あはは、あれは照れてるのかしらね」

「まあ、プロデューサーらしいですね。それにしても、相変らずやよいには
 甘いんだからプロデューサー」

「……わたし、ちょっと行って来ます!」

「あっ、私も!」

「ミキも~!」

と、やよいに付いて行こうとする春香と美希を綾乃が抱きついて止めに入った。

「はいはい、邪魔しないの。やよいちゃん、いってらっしゃい~♪」

「は、はい~!」

「あ、綾乃さーん、離してくださいよ~!」

「う~、やよいだけずるいの~!」


                 6月7日 TV局内カフェ 14:10

「……はあ」

TV局内にある喫茶店のテーブルで、プロデューサーは頬杖を突きながらため息を
付いていた。

「あ、あの?……、プロデューサー?」

「やよいか?来ると思った……そこに座れよ」

やよいは言われたとおりにプロデューサーの向かい側の席に座った。
……だが、二人とも何故か黙ったままだった。そんな中、最初に口を開いた
のはプロデューサーだった。

「……どうした?何か聞きたくて来たんじゃないのかよ」

「えっと、その、あの~……」

と、やよいがまごまごしていると、そこへウエイトレスがやってきた。

「おまたせしました。アイスコーヒーとジャンボチョコパフェお持ちしました」

二人の座っているテーブルにアイスコーヒーと大きいパフェが置かれた。

「ほれ、食えよ。お前が来ると思って頼んでおいたぞ」

「はわ……、い、いいんですか!」

「おう、いっぱい食べろ」

プロデューサーがそう言うと、やよいはさっそくスプーン片手にパフェを
食べ始めた。

「ん~♪おいしいです~♪」

「ん、よかったな。で、聞きたい事はもういいのか?」

やよいはスプーンをくわえながら、『ん~』とか言ってしばらく考えていたが
笑顔でこう答えた。

「はい!もういいです!前にプロデューサーも私の家の事を深く聞いて
 こなかった事ありましたよね。だから、もういいです」

やよいがデビューしたばかりの頃、やよいは家の事情の事をまだプロデューサーに
話してはいなかった。その事をプロデューサーも気にはしていたのだが、
『まあ、無理に聞こうとは思わない。気が向いたら話してくれよ』といった事があった。

「そういえば、そんな事もあったな。でも、お前は今だと色々と話してくれるだろ?」

「はい♪プロデューサーには私の事、いっぱい知ってて欲しいですし♪」

「……そっか。じゃあさ、俺も一個だけ話してやるよ」

プロデューサーはやよいの目を見てそう言った。やよいの方はいきなり
プロデューサーが真面目な顔で見つめてきたので、完全に動きが止まって
しまっていた。

「あ、あの、無理にお話しなくても」

「さっき、お前が言った言葉をそのまま返すよ。俺もさ、やよいだから知って
いてほしい事があるんだよ」

「そっ、そうですか……」

「俺が家族がいないのは前に話したよな。家族がいなくなってからの俺は、
簡単に言うと不良だったな。ケンカばっかやってて、すっごく荒れてたな」

「へー……。そんな風には全然見えないです?」

「……きっとそんな事言うのお前だけだと思うぞ。まあ、それからの俺は何にも
無くなっちまって、そんな事ばっかりやってたな。そんな時かな、社長に拾われたのは」

プロデューサーはアイスコーヒーを少し口に含んで天井を見上げていた。
やよいはそんなプロデューサーをじっと見ていた。

「社長に拾われてからの事も前に話したよな。まあ、それから色々あって、
今こうやってプロデューサーやってるんだけどな。……俺さ、ずっと探して
たんだよな。家族を無くした時に失くした大切なモノってヤツを」

「それって、何ですか?」

「なあ、やよい。『世界に一つだけの花』って歌、知ってるよな」

「はい、とってもいい歌ですよね。私、大好きですよ♪」

「そっか。俺が探してるのはあの歌にあるみたいな自分だけの花……。
 でも、見つかったと思う」

不思議そうな顔をしているやよいの頭に手を置き、プロデューサーは
やさしい表情でこう言った。

「あ、あの、プロデューサー?」

「それはお前だと思う。イヤじゃなければ、もうちょっとやよいのそばに
 居させてくれよな」

「……い、いやだなんて、そんな事ないです!私こそ、イヤじゃなければ
 ず~っとそばに居てください!」

やよいは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらプロデューサーにそう言った。
プロデューサーはそんなやよいを見て笑っていた。

「ああ、こちらこそよろしくな。ほら、パフェのアイス溶けちゃうぞ」

「はーい。……あの、プロデューサーも食べますか?」

「そうだな、ちょっと貰うか。あっ、でもスプーンがもう一個……って、
なんでアイスすくって俺に向けてるんだよ、やよい」

プロデューサーの言うとおり、やよいは自分のパフェを一すくいして
プロデューサーの方に向けていた。

「えへへ~♪はい、どうぞ♪」

「……おい、それで食えってか。うう……、仕方ないな」

諦めたプロデューサーは口を開けてやよいにパフェを食べさせてもらった。

「どうですか、プロデューサー?」

「ん……、うまい。でも、頼むから自分で食べさせてくれ」

「あの、プロデューサー。また約束してもらってもいいですか?」

「なんだよ?気にせず言ってくれ、何でも約束してやるよ」

やよいは少し間を置いてから、プロデューサーに言った。

「えっと、これからも私の事を守ってくれますか?……ダメだったらいいんですよ!
その、言ってみただけで、その!」

「いいよ、その位だったら任せてくれ。じゃあ、俺からも一ついいか?」

「はい?なんですか、プロデューサー?」

「……やよいが飽きるまででいいからさ、俺のそばに居てくれよな」

そう言って、再びやよいの頭を撫でながらプロデューサーは言った。
やよいも返事の代わりに笑顔で嬉しそうに撫でられていた。

「あっ、プロデューサー、まだ残ってますよ。はい、あ~ん♪」

「い、いや、頼むから自分で……。あ~、もういいか」



この数日、色んなことがあったけど俺は大切なモノを手に入れられたのかもしれない。
絶対にもう失くしたくない、守ってやりたい人を。


ここ何日かたくさんの事があったけど、その代わりにとっても大好きな人に
ちょっとだけ近づけた様な気がしました。きっと、私は飽きないと思うので
ず~~っとそばに居たいと思います♪いぇい♪


つづく
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今日初めてこのブログを拝見させて頂きました

自分もやよいが大好きで、全てのSSを見ましたが、今までに見たSSの中で一番素晴らしいです

特にこの話しは感動しました

どうかこれからも頑張って下さい
【 2009/09/21 】 編集
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