春屋

こちらはゲーム「THE IDOLM@STER」「東方project」を応援しているサイトです。管理人のプレイ日記や、SSが置いてあります。
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そんなある日のプロデューサー

こちらは春屋が出来た頃に書いた『アイドルマスター』のSSです。
オリジナルなPが出たりしていますので少しご注意を。

やよいとPが中心のお話です。



「おーし、今日はここまでにするぞ。おつかれー」

『おつかれさまでしたー!』

今日もレッスンスタジオからは4人の声が聞こえてくる。一人はプロデューサー
の青年。他の3人は彼が面倒を見ているアイドルの天海春香、如月千早、
萩原雪歩。今日も朝からレッスンだった為か、3人はヘトヘトの様であった。

「おい、休んでないで早く着替えてこいよ。次の仕事に間に合わなくなるぜ」

プロデューサーがそういうと、春香が不満そうに言葉を返した。

「プロデューサーさん、酷いですよ~。朝からず~っと、プロデューサーさん
にいじめられてたんですから~……って、いたたた!」

「誰がいじめたって!誰が~!」

そう言いながら、プロデューサーは春香の頭に拳を押し付けている。
そんなプロデューサーと春香を見ながら、千早がため息混じりに一言呟いた。

「春香、そんな所でじゃれていないで、早く着替えに行くわよ。
 行きましょう、雪歩」

「あ、うん。春香ちゃん、早く来てね」

そんな事を言い残して、二人は早々に更衣室へ歩いていった。

「ふっ、二人とも!そんな、私達いちゃついてるわけじゃ……
きゃー!恥かしいってば~!」

「・・・お前も着替えてこい!」

プロデューサーは、春香の背中を引っ叩きながら言った。

「うう~、痛いですよ~、プロデューサーさん……」

ようやく春香も更衣室の方へ消えていった。残ったのはプロデューサー
ただ一人であった。

「まったく、本当に子供なんだからあいつは。……それにしても、暇だな」

普段なら待ってる間にタバコでも吸ってくるのだが、今はそんな気分
ではなかった。プロデューサーは何か暇つぶしにならないかと辺りを
見回してみると……。

「ん?ピアノか……。そういえば、随分弾いてないかな」

そこには普段ボイストレーナーの先生が弾いているピアノがあった。
今日は先生が居なかったので、レッスンでは千早に弾かせていた。
ちなみに『プロデューサーが弾けばいいのでは』と言われたのだが、
『めんどくさい。』の一言で弾くのを拒んだのだった。

「……っま、あいつらが戻ってくるのいつも遅いし。久々に何か
弾いてみるか」

そんな独り言を言いながら、プロデューサーはピアノの椅子に腰掛けた……

……更衣室。

「まったく、春香は・・・」

早めに着替えを終わらせていた千早が、春香に文句を言っていた。
その春香は、まだ着替え中である。

「うう~……。でもプロデューサーさんって、厳しいけどその後で
優しい所がもうイイよね~♪」

さっき叩かれた背中をさすりながら、春香はプロデューサーの事を話し
始めていた。

「春香ちゃんって、本当にプロデューサーの事……その、好きだよね」

「きゃ~!雪歩ってば、何言い出しちゃってるの~!も~!!」

雪歩の一言でヒートアップしてしまった春香は、雪歩をバシバシ叩いている。

「いたい、いたいよー!春香ちゃんー!」

「あっ!ご、ごめん、雪歩。……でも、雪歩はプロデューサーをどう
思ってるの?だって、一番最初にプロデューサーに面倒見てもらったの
って、雪歩だよね?」

まだ、事務所が本当に小さかった頃。その当時のプロデューサーでは
一人を面倒見るのが精一杯だった。その中で、プロデューサーの目に
留まったのが雪歩だった。

「そ、そうだけど……。なんていうか……、最初はすっごい怖い人だって
思ってたけど。でも、本当は、すごく優しくって、頼りになって……」

「なるほど?……。千早ちゃんはどうなの?プロデューサーをどう思う?」

やっと着替え終わった春香が、今度は千早の方に話を振った。

「そうね……。最初は、なんてやる気のない人だろうと思ったわ。でも、
歌やダンスとかの技術はすごくって。途中からある意味目標みたいに
なってきたわね」

「そうなんだ?……。別に、プロデューサーの事好きとかはないの?」

「ないわ。そうね、あの人を表すなら……『先生』……いや、『師匠』ね」

その一言に春香と雪歩は固まってしまった。時たま、千早は理解不能な
ボケを言ってくるからである。本人とは無自覚に。

「なんていうか、千早ちゃんらしいね、雪歩……。ん?どうしたの雪歩、
ボーっとして」

「春香、それはいつもの事じゃないの?」

何やらひどい事を言われているにもかかわらず、雪歩は止まったままである。
二人とも気になったので、しばらく黙っていると、雪歩が聞いていた『何か』
が聞こえてきた。

「これ……ピアノだよね、千早ちゃん」

「ええ、それにこの歌……。行ってみましょう、二人とも」

「あ、うん。でも、この声って……」

そうして、3人はそのピアノの演奏者に気が付かれない様にスタジオの方へ
と戻っていった……

……すこし時間が遡って、レッスンスタジオ入り口前

「はあ、はあ……。亜美ちゃん、真美ちゃん……、まって~」

レッスンスタジオの入り口で、一人の女性がへたり込んでいた。
その後ろには金髪の女の子が立っていた。

「あふぅ……。元気だね亜美真美は~♪」

「そ、そんなのんきな事言ってないで……あの二人を捕まえて来てよ
美希ちゃん?」

今にも泣きそうになっている女性。彼女は765プロのもう一人の
プロデューサー、佐倉綾乃である。その隣のマイペースな女の子は
星井美希。765プロに入ったばかりの新人アイドルである。
そして……

「ねーちゃん、だいじょぶ~?」

「ごめんね、ねーちゃん。いきてる~?」

綾乃の前にやって来た双子。双海亜美と真美である。この二人は、
入れ替わりながらアイドルをやっているのである。この事は、
765プロでは一応トップシークレットである。

「はあ~……。二人とも、元気なのはいいけどお願いだからもうちょっと
おとなしくしていてね。追いかける私も、二人ほど元気じゃないんだから」

「はーい……。そっか、ねーちゃんもそんなに若くないからね~」

「……亜美ちゃん、もう一回それ言ったら私でも怒るわよ~」

「は、はい!」

「うう、ミキミキ~。ねーちゃんが怖い」

「うん、怖いね~。……ん?何だろう、なんかイイ感じの歌が聞こえるの」

美希がそう言うと、他の3人も耳を澄ませてみた。すると、ピアノの音と、
どこかで聴いた事のあるような声の歌が聞こえてきた。

「わ~、すっごく歌がうまいね~!」

「うん!でも、真美この声どっかで聞いたことあるような?」

「……この歌、もしかして」

4人がその歌を聴いていると、そこへ同じ事務所のメンバーが来た。

「あれ?綾乃さん、何そんな所で突っ立てるんですか」

「ああ、律子さん。いや、この歌声、聴いた事あるような気がして……」

「うわ~……。これ、歌ってるの男の人なのに、千早さんみたいに
上手です~」

「へー、先生でも歌ってるんじゃないの?ほら、春香達がレッスンに
来ているはずじゃない」

「うーん、でも前にボクが先生の歌聞いた時とはかなり違うような」

「そうですね~……。でも、どこかで聴いたようなお声ですね~」

いつの間にか、律子、やよい、伊織、真、あずさまで集まっていた。
ちなみに全員765プロのアイドルである。

「う~ん。ここに居てもしょうがないし、中に入って確かめてみましょう」

「あ、そうね。行きましょうか、みんな」

そう言って、みんなでゾロゾロと、建物の中へ入っていった……

それから、数分後……

「……ふう。うむ、久しぶりだったせいか、つい熱が入っちまったな。
 あー、疲れた」

そう言って、プロデューサーがピアノの椅子から立ち上がると、何やら
視線を感じた。それも、一人や二人じゃない。

「……まさか!」

プロデューサーが後ろを振り向くと、そこには春香と千早と雪歩が立っていた。

「なっ!ちょっ、お前ら!……聴いたのか?」

動揺のあまり、表情が引きつっているプロデューサーをよそに、
3人はそれぞれ先ほどの歌の感想を語り始めた。

「プロデューサーさん~!すごいじゃないですか!私、びっくりしました!
歌がうまいとは聞いていましたけど、あんなにすごいなんて~!」

「私も……。プロデューサー、もう一回歌ってほしいです」

「ちょっと悔しいです。プロデューサーが、あそこまでの腕前を持って
いたなんて。くっ、私もまだまだだと実感してしまいました」

プロデューサーはそれを聞いて、ちょっとふらついてしまった。
それと同時に、調子に乗って歌まで歌ってしまっていた自分に後悔も
していた。

「あ~……。お前ら、今聞いたのは全部記憶からリセットしなさい」

「無理ですよ~、そんなの……。プロデューサーさん、なんで拳を振り
上げるんですか!?」

「叩いたら忘れるかなと……ん?」

プロデューサーがふと奥の扉を見てみると、そこから見たことのある
おさげ髪が覗いていた。

「……出て来い、律子」

「あっ。ばれちゃったか?……あはは」

「……まあ、いいや。お前ら、今の事は他の奴らに言うなよ、いいな!」

「えーっと、それは無理かも……」

律子がばつが悪そうにそう言うと、律子の後ろから他のみんながゾロゾロと
出てきた。それを見たプロデューサーは、完全に凍り付いてしまった。

「うっう~!プロデューサー、やっぱりすごいです~!歌もうまいなんて、
本当に何でもできちゃうんですね~!」

「まったくね。あんた、弱点とか本当になさそうね。まさに完璧超人……」

「あふぅ、すっごい人だったんだね~。ミキ、ちょっと見直したの~♪」

と驚きのやよいと伊織と美希。

「兄ちゃんすごかったよ~!アンコール、アンコール!」

「真美もー!もう一回聞きたーい!兄ちゃん、歌って歌って~!」

「なによ~、そんなにうまいんだったら、もっと早く言ってよね」

大絶賛する亜美と真美、それとちょっと呆れている綾乃。

「そうね~。そうしたら、うまく歌えるコツを教えてもらえたかも
しれないわね、うふふ」

「そうですね。僕も、今度教えてくださいよプロデューサー!」

そして、あずさと真も拍手をしていた。

みんなは楽しそうなのに対し、プロデューサーはすっかりと魂が抜けている
状態になっており、壁に寄りかかってやっと立っている。

「……こんな時、人はデ○ノートが欲しくなるのかな」

「プロデューサーさん、怖い事をボソッと言わないでくださいよ……」

すると、突然拍手の音と共にボイストレーナーの先生までやってきた。

「いやー、おみごと。君の歌は久しぶりに聞いたけど、ぜんぜん腕が落ちて
ないじゃないか。うん、とてもよかったよ」

「な、なんであんたまで居るんだよ!」

「さっき戻ってきてね。君には悪いけど聞かせてもらったよ」

「……う、うう」

プロデューサーは、もう限界とばかりに肩を震わせて下を向いている。
そして・・・

「うあー!!お前ら全員覚えてろよーー!!」

と、捨て台詞を残して走り去ってしまった。

「プ、プロデューサーさーん!まってくださいよー!」

「行っちゃったね……。どうしよう、千早ちゃん」

「ど、どうしようって……。先生?どうかしましたか」

「くっ、あはは!いや、彼があんな風に慌てているのなんて初めて見た
ものだからね。可笑しくてね……ははは、本当に面白い物見せて
もらったよ」

先生は大笑いしながらさっきのプロデューサーの行動を楽しんでいる様
だった。だが、その様子を見て他のみんなはちょっと驚いている。

「私、先生があんな風に笑ってるの初めて見ました~」

「そうね。ある意味、こっちの方が珍しいかも」

「ああ、失礼。でも、昔の彼を知っている僕としては、これはすごい事
なんだよ」

「えっと、私は最近入ったばかりなんで分からないんだけど。彼って、
昔は歌手をやっていたんですか?」

「ミキも知らないんだよね。先生、どうなの?」

綾乃と美希にそう聞かれ、少し悩んだ後に先生は答えた。

「そうだね、あんまり喋ると彼に怒られてしまうから言わないけど。
綾乃君の言うとおり、彼は昔歌を歌っていたよ。でも、その頃の彼は
今とは正反対だったね」

「そうなの?って、事は……ものすっごく暗~い感じ?」

「うん。その頃の彼は色々あったからね。でも、最近の彼はとってもいい顔
をするようになったと思うよ。君達のおかげだろうね、僕はそう思ってるよ」

「そうだったの……。彼も、色々と大変だったのね」

綾乃は、普段のプロデューサーの行動などを思い出してみた。仕事は
ちゃんとしているけど、亜美や真美と一緒になって遊んでいたり、
千早や真が家の事情で困っている時に本気で話を聞いてあげていたり。
普段の彼はそんな暗い一面を見せることなく行動していた。

「ふう、私より年下なのに私よりずっと大人だわ、彼」

「それは、綾乃さんが子供っぽいから……」

「春香ちゃん。それ以上言うと、ちょっとひどい目に遭ってもらうけど?」

「す、すいませんでした……」

どんな目に遭わされるか分からないが、恐怖を感じた春香はすぐさま謝った。
でも、他のみんなも頭の中では同じ事を考えていた。

「まあ、あまりこの事で彼をいじめるのはやめてくれないかい。こんなので
『プロデューサー辞める』なんて言われたら大変だからね」

「はい……。あれ?なんか忘れてるような……」

「……春香!次の仕事よ!」

「ええ~!すっかり忘れていました~!」

春香達はすっかりと次の仕事を忘れて話に夢中になってしまっていた。
それと、もう一つの問題も。

「あー!プロデューサーさんがいない!」

「あー、仕方がないわね。私が代わりに行くわ。律子さん、
後の事おねがいね」

「わかりました。あとで、プロデューサーに言っておきますね。
まったく、どこほっつき歩いてるんだか……」

綾乃は残ったみんなを律子に頼んで、春香達を連れてスタジオを
後にした。

「さて、それじゃあレッスンを始めようか。やよい君達は今日は予定に
入っていなかったけど、ついでに見てあげよう。さあ、始めるよ」

数時間後

……一方その頃のプロデューサーは。

「……はあ~。我ながら、ガキみたいな事しちまったな」

765プロの屋上で、一人ため息を付きながらプロデューサーは
愚痴をこぼしていた。

「……あ。あいつら次の仕事大丈夫かな。……まあ、綾乃と律子が
いたから平気か」

屋上の壁に背中を預けて座りながらタバコを探すのだが、こんな時に限って
たばこがなかった。プロデューサーがさらにため息を付こうとすると、
目の前にたばこが差し出された。顔を上げると、そこには社長が立っていた。

「……何か用ですか、社長」

「いや、君が元気なく屋上に歩いて行ったのを見かけてね。
何かあったのかい?」

「別に……って、あんたに隠し事しても分かっちまうか」

「そうだね。君とはそこそこ長い付き合いのつもりだよ、私は」

社長が差し出してくれたたばこを貰い、それに火を点けながら
プロデューサーは先ほどあった事を話した。

「なるほど。君らしいね、そんな所は」

「うるさいって……。ガキっぽいとか思ってるんだろ、あんたの事
だから」

「いや。むしろ、嬉しく思ってるよ。君がそんな風に変わったのと、
また歌を歌っていた事をね」

「……なんで」

社長は少し考え、たばこの煙を吐いた後に答えた。

「君は迷惑かもしれないがね、私は君の事を息子の様に思っている。
だから、今、こうしてみんなと楽しそうにやっている君を見ていると、
とても嬉しいのだよ」

「そんなに昔の俺はひどかったか?」

「そうだな……。君も、あの頃は色々あった事だしね。でも、
そんな時私に会った」

昔を懐かしむように、社長は話続ける。プロデューサーは
それを黙って聞いている。

「そして、まだ立ち上げたばかりの765プロに君をスカウトした」

「半ば無理やりだったけどな……。それで、俺は歌を歌った……でも」

「そう、デビューして数ヶ月。君の歌の効果もあり、人気は一気に
トップに近い所まで上がった……だが、君は急にやめると言い出した」

社長がそう言うと、プロデューサーの瞳に悲しみ満ちていた。
空を見つめて、黙り込んだままである。

「その後、私が提供した家からも居なくなってしまって。はは、
その後すっかり事務所は寂れてしまったよ」

「だから、俺がここまででっかくしてやったろ。それでおあいこだ……」

社長は携帯用の灰皿にたばこをしまい、プロデューサーの目を見て訊ねた。

「君は、なぜみんなに歌を聴かれるのをそんなに嫌がるのかね……」

「そうだな……。そういえば、俺がやめた理由、言ってなかったな。
あれ、気が付いたんだ」

プロデューサーも携帯用の灰皿にたばこをしまい、思い出したくない
昔の事を語り始めた。

「俺さ、ただ歌ってるだけだったんだ。応援してくれたファンの事とか、
その先の想いとか……そんなの、何一つ考えないで歌ってた」

「うむ……」

「それに気づいてから、歌うのが急に嫌になったんだ。なんか、俺のために
応援してくれた奴らに、申し訳なくって……それで」

下を向いて、プロデューサーは語り続けた。社長はそれを聞き続ける。

「だからさ……、あいつらにも、春香達にも申し訳ないんだ。特に、
春香と千早は歌に賭けてる。だから、俺みたいな、いい加減に歌っている
俺の歌を聴かれたくないんだ……」

「……でも、君の歌を聴いたとき、二人は君の事をひどく言ったかね?」

「えっ?いや……でも、表面上はうまく歌えていただけで……」

「でも、それだけでみんながそんな風に褒め称えてくれるかね?
先生も拍手をくれるほどだったのだろう」

「そうだけど……」

「君は気が付いていないのだろうけど、今の君は、昔とは比べ物に
ならないくらい感情的になったと思うよ。それが君の歌を、君自身を
変えたのだと思う。まあ、私の勝手な考えだがね」

プロデューサーは社長に言われた事を考えていた。確かに、この事務所に
入ってからの自分は、昔に比べれば怒るし笑う。それは、この事務所の
みんなといたからだと分かっていた。そして、今ここにいれるのは、
他ならぬ社長のおかげである事も。

「……やっぱり、あんたには勝てないよ、社長。あんたに比べれば、
俺はなんて子供なんだか」

「ははは、だからこそ、成長していくのを見るのが楽しいのだよ。
さてと、後は若い子に任せるとするかね……」

プロデューサーが社長の向こう側を見ると、そこにはいつからいたのか、
やよいと伊織が立っていた。

「お前ら……いつから居たんだよ」

「結構前からよ。まったく、寒くて死ぬかと思ったわよ……。
話は終わったの、社長?」

「うむ、後は任せたよ、二人とも。それじゃ、私はこれで……」

「待ってくれ……。えっと、なんだ……、ありがとう。あんたのおかげで、
俺はここに居られる。だから……この恩は一生かけても返す、必ずだ」

社長はそれを聞くと、ニッコリ笑って屋上を後にした。

「あ、あの……プロデューサー」

「ん……、お前達も悪かったな。俺のせいで色々」

「私達はいいけど、後で春香達に謝っておきなさいよ。一番迷惑かけた
だろうし、にひひ」

「うっ……、わかった、覚えておくよ。それにしても、なんでここに
居るんだお前達?」

「あんたね~……。急に居なくなったりするから、やよいがすっごく
心配してたのよ。それで、一緒になって探してあげたの」

「うう~。だって、もしこのまま居なくなっちゃたらとか思ったら、
心配になっちゃって……」

やよいは本当に心配そうな顔でそう言った。伊織も怒っている表情では
あるが、プロデューサーの事を心配していた。

「あのな、俺は野良犬とかじゃないんだから戻ってくるって。昼間の事は、
なんだ……恥かしかったんだよ、色々と……」

「さっきのお話、聞いてました。プロデューサーは、優しいんですね」

「なっ!なんでだよ!俺は……」

「だって、優しいから、ファンの人達に申し訳ないと思ったり、春香さんや
千早さんにも同じ様な気持ちになったんですよね?」

やよいにそんな事を言われてしまい、照れくさくなったプロデューサーは
やよいから目線を逸らした。

「まあ、そんだけあんたがお人よしって事ね。でも、それでいいじゃない。
もう昔の事でしょ、今もそんな事でいじけているあんたなんかに、私は
プロデュースされたくないわよ」

「……悪かった。すまないな、二人とも」

「わ、私は別に~!ただ、やよいが心配だって言うから~!」

「はいはい。でも、本当にすまなかったな。それと、ありがとうな、
探しに来てくれて」

プロデューサーはそう言って、二人の頭を撫でてやった。やよいは喜んで
いるが、伊織はちょっと怒っている様であった。

「何するのよ……。髪型崩れちゃうでしょ」

「たくっ、素直じゃねえな。わかりましたよ、お嬢様。後で直させて
いただきますよ」

「プロデューサー、伊織ちゃんだけですか?……」

「……はいはい、もう一人のお嬢様にもさせて頂きますって。はあ、俺って
保父さん向いてるかもな」

「そうだ、プロデューサー。おねがいがありまーす!」

「ん?なんだよいきなり……、言ってみろ」

「えっと……。もう一回、プロデューサーの歌聴いてみたいです!
おねがします!」

やよいはいつもの様の元気いっぱいのお辞儀をしてプロデューサーに
お願いした。お願いされた方は、どうしていいやら固まってしまっている。

「いや……その。い、伊織、何とかしてくれよ」

「そうね~……。探すのに疲れたことだし、そのお礼ぐらいは払って
もらわないとね~、にひひ♪」

助けを求めた伊織にもそんな事を言われ、プロデューサーも諦める事にした。
それに、プロデューサー自身、今は少し歌いたい気分だった。

「……今度は他の奴は居ないだろうな」

「ちょっと待ってなさい……うん、居ないわよ。さ、歌ってもらい
ましょうか?」

「何を歌うんですか、プロデューサー!」

「そうだな……昔、俺が作った曲でいいか。もう、錆びちまってるかも
しれないけどな」

「どんな曲なの?イメージ的には、ロック系歌ってそうだけど」

「ああ、ロック系中心だった。でも、一回だけバラード作った事が
あったんだよ。ちなみに、俺がやめた時に歌った曲なんだけどな」

「そうなんですか……その、今更ですけどいやなら」

「いいんだよ。それじゃ、歌うぞ」

プロデューサーが歌おうとした時だった。

「ちょっと待った。何て曲名なのよ?」

「……どうでもいいだろう」

「よくないわよ……。ね、やよいも知りたいわよね?!」

「はい!知りたいです!」

内心、伊織を恨みながら、渋々曲名を教える事にした。

「……『遠い昔の鎮魂歌(レクイエム)』だよ。……なんだよ、無駄に
かっこよさげな曲名つけたとか思ってるんだろ」

「そんな事思ってないですよー!ねっ、伊織ちゃん!」

「そうね~……」

とか言いつつも、伊織は笑うのを必死で我慢していた。何せ、今の
プロデューサーからはイメージできないような曲名が出てきたから
である。

「まあ、いいや。じゃあ、歌うぞ……」

今だけは二人に喜んで欲しい。そう思いながら、プロデューサーは歌った。
今までの事をすべて振り払うように。

数分後……

「……はあ、疲れた。これで満足ですか、お嬢様方」

「うっう~!やっぱり、プロデューサーすごいですー!なんて言って
いいかわからないですけど、すごく良かったです!伊織ちゃんは
どうだった??」

「そうね。千早じゃないけど、ちょっと悔しいわ。あんなにうまいと、
文句の付けようもないじゃない……。それに、あんたの作った歌、
よかったわよ」

「ん……ありがとう。でも、もうこんな風に歌わないからな。やっぱり、
なんか恥かしいし」

プロデューサーは頭をかきながら向こうを向いてしまった。ところが、
伊織はわざわざ回りこんできた。

「何のつもりだよ、お前は~!」

「いや、折角だし、照れまくってる表情を見ておいてやろうと思ってね~♪
ほら、やよいも来なさいよ~!」

「あ、うん!」

「だー!来なくていいって、こら!お前ら、やめろ~!!」

そう言いながらも、プロデューサーの表情は笑っていた。これからも、
人前で歌うのは気が進まない。でも、たまになら、みんなの前でならと
プロデューサーは思った。

「さて、中に戻るぞ。……本当にありがとうな、やよい、伊織」

「プロデューサー、こんな時はアレです!伊織ちゃんも、ほら!」

「え?、私はいやよ。って、プロデューサー!勝手に手を引っ張ら
ないでよ!」

「うるさいぞ。ほれ、行くぞー!」

「ハイ!ターッチ!!いえ~い!」

「おし、それじゃあ、もう一仕事がんばるかな」

「まったく、あんた達のノリは疲れるわ……」

そうして、3人とも屋上を後にしていった。

…………
………………
……………………

「っくしゅん!……出損ねちゃったね、千早ちゃん」

「ええ。まさか、あの二人に持っていかれるとは思わなかったわね
……くっしゅん!」

「千早ちゃん、春香ちゃん。大丈夫?はい、あったいお茶です」

ちなみにこの3名は社長が行った後にやってきたのだが、すっかり出る
タイミングを無くしてしまい、現在に至る。

「……私たちも戻ろうか」

「そうね……くっしゅん!」

「わわ、二人とも大丈夫ですか……」

案の定、春香と千早は次の日風邪を引いて休んだ。
そして、何故か雪歩だけは無事であった。

「あの二人が風邪なんて、めずらしいな……」

「は、はい。なんででしょうね~……」

その原因となった本人は、その事をまったく知らない……

つづく。
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